「医療を止めない」 被災地の病院を支援

~令和6年能登半島地震 被災地への緊急支援活動

寄稿者:新井 和雄(下館ロータリークラブ会員、第2820地区パストガバナー/緊急災害支援隊)

能登半島地震発生

元旦の所作を終え、茨城県の自宅で典雅な雅楽の調べに京の友から贈られた銘酒を傾けたころ、ゆさゆさと始まった揺れはうたた激しくなり、災いの記憶が脳裏をよぎりました。令和6年1月1日午後4時10分、最大震度7を観測した能登半島地震が発生した瞬間でした。

東日本大震災を経験した私たちは被災者の困難が直観でわかるとはいえ、日に日にあらわになる被災地の惨状を目の当たりにし、支援の手が届きにくい現実にロータリアンとして歯がゆさを覚えました。

能登で地域医療を支える神野正博さんと連絡を取ったのは、1月6日のこと。私と同期のガバナーだった神野さんは、七尾市で恵寿総合病院を経営しています。


神野さん(七尾ロータリークラブ会員)ご夫妻と筆者(写真右)
続きを読む

ウクライナの人びとに義肢を

多くのサポートを得て実現した奉仕プロジェクト

寄稿者:倉金 由幸(さいたま大空ロータリークラブ会員)

友人を介してアイデアが形に

このプロジェクトが生まれたのは、クラブの2023‐24年度の国際奉仕活動として何をするかを話し合っていた会議でした。

第2770地区ではロータリー財団の地区補助金の通常枠とは別に、グローバル補助金事業につながる、また同様な考え方をクラブに体験してもらうことを目的とした地区補助金の大口枠があります。

当クラブは、多国籍の会員がいるというクラブの特色を生かして、通常枠での国際奉仕活動に並んで大口枠でスリランカ、モンゴルなどで奉仕活動を重ねてきました。

今年度、どこで何をしようか思い悩んでいたところ、当クラブの小口会員より「国連職員の友人がキーウのロータリークラブに参加しているので、ウクライナでの奉仕活動先を探ることができる」と提案してくれました。

続きを読む

ウクライナから届いた日本への感謝のメッセージ

日本のロータリーが仮設住宅設置プロジェクトを支援

寄稿者:新井和雄(下館ロータリークラブ会員、国際ロータリー第2820地区パストガバナー)

ウクライナから届いた日本のロータリーへの感謝のメッセージ動画

ウクライナからのSOSに日本のロータリーが応える

ウクライナ第2232地区は、2021年9月に第2820地区(茨城)がホストを務めた「地球環境保全グローバルプロジェクト」に参加し、ウクライナ各地で海岸や河川、湖沼、各地の公園の清掃を行ってくれました。その縁もあって、今年2月23日にはオンラインでロータリー117回目の誕生日を一緒に祝い、そこでは国際紛争が始まる気配などまったく感じられませんでした。ところが一夜明けた24日、ウクライナ各地がミサイル攻撃され、多くの市民が被災したと昨年度ガバナー(2021-22年度)のボンダレンコさんから連絡がありました。

続きを読む

今度は私たちが助ける番

~朝鮮戦争を経験した国、韓国の会員がウクライナを支援

※この記事は『Rotary Korea』誌2022年8月号に掲載されたものです。

寄稿者:ユン・ヨンジョン(アンサンOLGロータリークラブ会員、第3750地区パストガバナー)

2022年2月24日、私たちがロータリー創立117周年を祝った翌日、ロシアがウクライナに侵攻しました。それに続く戦闘で1,200万人以上が避難を余儀なくされ、そのうち近隣諸国に逃れた人は500万人以上に上ります。避難民の多くは、人道的支援に頼って生活しています。

キーウはソウルから遠く離れており、韓国がこの戦争の影響を直に受けているわけではありません。しかし、この危機で思い出すのは、1950年代初期の朝鮮戦争です。民間の死者、負傷者、行方不明者の数は300万~400万人に上り、わが国は破壊されました。

続きを読む

ウクライナ発:ロータリーのネットワークに励まされて

~結束の中に希望と強さを見出したリヴィウのロータリークラブ

寄稿者:オレスト・セモテュック(ウクライナ、Lviv Internationalロータリークラブ会員、第2232地区広報委員会委員)

2月24日の朝はいつもと変わらず始まりました。起床、ジョギング、そして朝食。しかし、朝食を食べているときに、ラジオのニュースで、ウクライナがロシアに爆撃されていることを知りました。

すぐにほかの都市に住む友人や知り合いに電話し、安否を確認。幸いにもそのほとんどが無事でした。その日の午後、私が研究のために2018年に滞在したレーゲンスブルク(ドイツ)のテレビ局から電話があり、その後もほかのメディアから次々と問い合わせがありました。こうして、私の活動が本格的に始まりました。

続きを読む

ウクライナからデンマークへ:ロータリアンの家に身を寄せた17歳からのメッセージ

寄稿者:アルテム・ジアブロフ

私はカラジンハルキウ国立大学(ウクライナ)の1年生で、数学とコンピュータサイエンスの学士号を取得するために勉強しています。戦争が始まる1週間前、母は私をハルキウ(ウクライナ北東部)からイルピン(キーウに隣接)に連れ戻しました。

2月24日の朝5時、母に起こされ、戦争が始まったこと、そしてハルキウが攻撃されていることを知らされました。窓から外を見ると、10キロほど離れた空港に爆弾が落とされるのが聞こえました。その後、ウクライナの戦闘機がすぐ近くまで飛んできて、街からミサイルでロシア軍を爆撃しており、そこにいるのがとても恐ろしかったです。

続きを読む

平和の祈りを込めたコンサート

広島の家族がロータリーを通じてウクライナを支援

エレナ・ボンダレンコ(平石)さん

寄稿者:エレナ・ボンダレンコ(平石)  

私は、ウクライナ東部のドニプロという都市で育ちました。父はウクライナ人、母はロシア人です。留学のため21歳で来日し、広島市内の会社に勤めました。広島西南ロータリークラブ会員である夫・雅史と出会って、今では10代の息子3人を育てています。夫を通じてロータリーについて知り、7年ほど前にベトナムに赴いてロータリーの孤児院支援活動にも参加しました。

2年前から、末の息子のバイオリン留学のためドイツに住んでいます。ウクライナでの恐ろしい戦争が勃発したのは、2月下旬に日本に一時帰国していたときです。ウクライナの親せきや親友たちのことを考えると心配でたまりませんでした。キーウやドニプロだけでなく、マリウポリとドネツクから脱出できずにいる知り合いもいます。

続きを読む

ウクライナへの救援物資を積んで真夜中に走るトラック

寄稿者:セバスチアン・アダミ(クラーゲンフルト-ヴェルターゼー・ローターアクトクラブ[オーストリア]会員)

集めた物資をトラックに積むKlagenfurt-Wörtherseeローターアクトクラブ(オーストリア)のメンバー

3月2日の夕方、私は6カ国のローターアクト会員や仲間とともに、ポーランドとウクライナの国境近くに救援物資を届けるため、トラック5台でオーストリアを出発しました。徹夜で走り続けましたが、トラックを見た沿道の人たちが懐中電灯やそのほかのサインでエールを送ってくれたことに元気づけられました。トラックにつけた国旗から、私たちが救援物資を運んでいることがわかったのです。

続きを読む

キーウを逃れたウクライナ人会員からのレポート

稿者:イリーナ・ブシュミナ(第 2232地区[ウクライナ]ローターアクト代表)

イリーナ・ブリュミナさん

戦争勃発から数時間以内に、私は姉夫妻と生後3カ月の甥、そして一匹の猫とともに、車でキーウを逃れました。国境に着いたときには既に男性の出国が禁止されていたため、義理の兄を残して国外に脱出しました。5日間の運転を経て、6日目にウィーン(オーストリア)にたどりつきました。 

その途上の3泊は、ホテルではなく、ロータリアンやローターアクターの自宅に泊めていただきました。国際ロータリーが大家族であるとはよく言われますが、この時にそれを実感しました。いつでも支えてくれるのがロータリーファミリーであることを、肌身で感じました。

続きを読む

災害と紛争 — 女性の立ち上がる力

By Victoria Ifould(災害救援団体「シェルターボックス」スタッフ)

ロータリーとシェルターボックスは、20年以上にわたり、災害時に人びとが「家」と呼べる場所をもつことができるよう協力活動を行ってきました。シェルターボックスは、災害に見舞われた世界各地の家族に緊急シェルターやその他の必要な援助を提供し、生活の再建を支援しています。

通常の状態でジェンダーにおける不平等を経験する女性や女児は、災害時にも不平等を経験します。災害時や紛争時において女性が死亡する割合は男性より高いことが分かっています。また、女性に対する暴力が増加し、生活手段や教育へのアクセスにおいても女性は多くの困難を経験します。このため復興プロセスでは、女性の強さと立ち上がる力に着目することが極めて重要となります。

二人の女性をご紹介します。

続きを読む

シリア紛争の10年

By Victoria Ifould(災害救援団体「シェルターボックス」スタッフ)

シリア危機は、これまでにシェルターボックス*が対応してきた最大かつ最も長期にわたる課題です。2012年12月以来、40万人以上を支援し、テントや冬用衣類の提供など、必要な支援を行ってきました。
(* シェルターボックスは、災害救援活動におけるロータリーのパートナー団体です

紛争開始から10年が経過した現在も、繰り返される争いによって故郷を追われる家族が後を絶たず、緊急シェルターが引き続き必要とされています。また、長年使用され、修理が必要なシェルターも多くあります。

年月を重ねるごとに、シリアの惨状は主要なニュースメディアで取り上げられなくなります。しかし、世界中のロータリークラブやローターアクトクラブからの継続的な支援のおかげで、シェルターボックスは支援活動を続けることができています。 シリア紛争の報道では、しばしば数字や統計が注目されます。現地では、これまでに1,230万人もの市民が避難生活を余儀なくされていますが、この数字から状況を想像し、紛争が人びとに与えている影響を理解することは難しいでしょう。統計の背後にある、10年間の悲惨な現実を伝えることが重要なのです。

続きを読む

津波が押し寄せたあの日  

~東日本大震災を振り返る~(第2回)

寄稿者:佐々木一十郎(名取ロータリークラブ会員)     

紙一重だった運命の分かれ道

震災後に自衛隊の指揮官らと捜索活動の協議をする佐々木さん(写真左)。

震災当時、私は名取市長の職にありました。名取市は仙台市の南隣に位置し、仙台空港の所在都市です。

2011年3月11日、名取市の沿岸部は想定を超える9メートルあまりの津波に襲われ、当時の人口73,502人のうち、911人の命が失われました。広大な仙台平野の一部で平坦な地形だったため、津波は海岸から5.5キロメートル入った内陸部まで到達していました。

私自身は、地震発生時に沿岸から6キロメートルほど離れた名取市役所3階の市長公室で会議中でした。震度6強というこれまで経験のないほどの激しい横揺れに耐えたのち、災害対策本部を立ち上げ、対応に追われる日々を過ごしました。

続きを読む

「あれから10年」

〜東日本大震災を振り返る〜(第1回)

寄稿者:菅原 裕典(仙台泉ロータリークラブ会員)

葬儀屋として大勢の犠牲者を弔う

大規模な遺体安置所となった体育館

東日本大震災の死者は、関連死も含めれば約2万人、いまなお行方不明の方は2千人以上います。現在、私たちを取り巻く新型コロナウィルスによる世界的なパンデミックも未曾有の事態が及ぼす災禍であると言われていますが、10年前に発生した東日本大震災という未曾有の災害で、私は、自分の職業を通じて力を捧げなければならない状況に直面しました。

東日本大震災の発生や被害状況については既知の通りですが、葬儀社を経営している私に求められたのは、多くの犠牲者をどのように弔うかという待ったなしの課題でした。自治体の要請を受けて数千本の棺を調達し、全国の同業者から大きな支援をいただきながらこれを組み立て、県内各地に輸送し、安置所での納棺までを指揮し続けました。

続きを読む

クラウドファンディングの力:新型コロナ禍の食糧安全保障に取り組む

By Vanessa Rousseau(南アフリカ、Newlandsロータリークラブ)

私たちはロータリークラブ会員として、新型コロナが私たちの国や町の食糧安全保障に与える破壊的な影響を、黙って見ていることはできません。

ファンドレイジングの資金で購入した食料の袋がホールいっぱいに置かれました

最初のロックダウンが発令されたとき、私たちはすぐさま行動を起こしました。最も支援を必要とする人びとを手助けできるよう、長年一緒に多くのプロジェクトに取り組んできた地域社会のリーダーに連絡を取りました。

まず一人の会員が、南アフリカのクラウドファンディングツール「BackaBuddy」に支援を募るためのページを立ち上げ、救援物資(食料)を確保するための協力を呼びかけました。

続きを読む

コロナウイルスに打ち勝つための3原則

寄稿者:ジョー・オティン(ロータリー第9212地区ガバナー)

hand washing in east africa私たちの人生で世界が一転するほどの決定的な瞬間があるとすれば、まさに今がそれに当たります。人類の運命を世界的に変えた第二次世界大戦を生き抜いてきた方々が、私たちの一つ前の世代でした。歴史上、先人たちは耐え難い経済崩壊や壊滅的な武力紛争、気候の大変動など、絶望や死、破滅をもたらす衝撃的な出来事に直面してきました。

このような過去の出来事は、私たちが行動方法を見直し、既存の制度を再構築し、生き方を変えるきっかけとなってきました。 続きを読む

ロータリーからの震災復興支援に「ありがとう」

~宮城県南三陸町長が感謝のメッセージとともに国際ロータリー事務局を訪問

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

南三陸町の佐藤仁町長(左)と小沢一彦元ロータリー財団管理委員

2011年3月11日の東日本大震災の後、「ロータリー東日本震災復興基金」には世界中のロータリー会員や他団体から多額の寄付が寄せられました。これらの寄付で、多くの被災地支援プロジェクトが実施されました。

支援を受けた地域のひとつに、宮城県本吉郡南三陸町があります。この町では、津波の被害による死者と避難生活に伴う震災関連死が620人を数え、いまだ行方不明者が200人以上います。町の住宅の約6割に相当する3,143戸が全壊という大きな被害を受けました。

あれから8年以上を経た2019年8月22日、 続きを読む

“命のロータリーキッチンカー”で被災地を支援

寄稿者:中川宝星(2720 Japan O.K. ロータリーEクラブ)

2016年4月14~16日に発生した熊本・大分地震では、50名の死者が出たほか、多くの人が被災しました。石垣が崩れた熊本城の姿を記憶している方も多いのではないでしょうか。この際、世界各国ならびに日本全国のロータリークラブから第2720地区に多くの支援金を送っていただきました。まずはこの場を借りて、その際のご支援に心から感謝いたします。DSC_4270 続きを読む

ロータリーとのつながりで開けたピアノ人生

寄稿者:吉田 昴城

私は現在、ウィーン国立音楽大学ピアノ科に在籍し、教授、ならびにピアニストでもあるヤン・イラチェック・フォン・アルニン先生のもとで、日々勉強しています。

kokiyoshida_2

現地で開かれたコンサートにて

まずはじめに、私が留学に至るまでの経緯、ロータリークラブとの出会いを、紹介いたします。

2011年3月11日、誰もが忘れもしない東日本大震災発生。私の故郷である福島県、浪江町もとても大きな被害を受けました。震災後、原発事故の影響により帰宅困難となり、ピアノの練習もままならない生活が始まりました。 続きを読む