津波が押し寄せたあの日  

~東日本大震災を振り返る~(第2回)

寄稿者:佐々木一十郎(名取ロータリークラブ会員)     

紙一重だった運命の分かれ道

震災後に自衛隊の指揮官らと捜索活動の協議をする佐々木さん(写真左)。

震災当時、私は名取市長の職にありました。名取市は仙台市の南隣に位置し、仙台空港の所在都市です。

2011年3月11日、名取市の沿岸部は想定を超える9メートルあまりの津波に襲われ、当時の人口73,502人のうち、911人の命が失われました。広大な仙台平野の一部で平坦な地形だったため、津波は海岸から5.5キロメートル入った内陸部まで到達していました。

私自身は、地震発生時に沿岸から6キロメートルほど離れた名取市役所3階の市長公室で会議中でした。震度6強というこれまで経験のないほどの激しい横揺れに耐えたのち、災害対策本部を立ち上げ、対応に追われる日々を過ごしました。

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「あれから10年」

〜東日本大震災を振り返る〜(第1回)

寄稿者:菅原 裕典(仙台泉ロータリークラブ会員)

葬儀屋として大勢の犠牲者を弔う

大規模な遺体安置所となった体育館

東日本大震災の死者は、関連死も含めれば約2万人、いまなお行方不明の方は2千人以上います。現在、私たちを取り巻く新型コロナウィルスによる世界的なパンデミックも未曾有の事態が及ぼす災禍であると言われていますが、10年前に発生した東日本大震災という未曾有の災害で、私は、自分の職業を通じて力を捧げなければならない状況に直面しました。

東日本大震災の発生や被害状況については既知の通りですが、葬儀社を経営している私に求められたのは、多くの犠牲者をどのように弔うかという待ったなしの課題でした。自治体の要請を受けて数千本の棺を調達し、全国の同業者から大きな支援をいただきながらこれを組み立て、県内各地に輸送し、安置所での納棺までを指揮し続けました。

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