平和の祈りを込めたコンサート

広島の家族がロータリーを通じてウクライナを支援

エレナ・ボンダレンコ(平石)さん

寄稿者:エレナ・ボンダレンコ(平石)  

私は、ウクライナ東部のドニプロという都市で育ちました。父はウクライナ人、母はロシア人です。留学のため21歳で来日し、広島市内の会社に勤めました。広島西南ロータリークラブ会員である夫・雅史と出会って、今では10代の息子3人を育てています。夫を通じてロータリーについて知り、7年ほど前にベトナムに赴いてロータリーの孤児院支援活動にも参加しました。

2年前から、末の息子のバイオリン留学のためドイツに住んでいます。ウクライナでの恐ろしい戦争が勃発したのは、2月下旬に日本に一時帰国していたときです。ウクライナの親せきや親友たちのことを考えると心配でたまりませんでした。キーウやドニプロだけでなく、マリウポリとドネツクから脱出できずにいる知り合いもいます。

ウクライナの親戚に電話したところ、ドニプロ近くの安全な地域に住んでいるいとこが、病院や避難者・負傷者のための医療物資を集めていることを知りました。紛争から逃れてきた避難民が次々とドニプロに流れ込み、患者であふれ返る病院は医療物資を切実に必要としていました。

第2710地区ガバナーである杉川聡さんのお声がけでロータリークラブでスピーチを行い、人道的援助を呼びかけました。これらのロータリークラブは既にウクライナのために募金やロータリー財団への寄付を行っていました。

毎日大勢の人が命を落とし、状況が日に日に悪化する中、私は、支援を必要とする人たちに迅速かつ直接に支援を届けたいと思い、ウクライナのロータリークラブに連絡を取ってみることにしました。日本の複数のロータリークラブからも、ウクライナ語がわかる私や親戚に現地のロータリーリーダーとの窓口となり、具体的にどのような支援が必要とされているのかを尋ねてほしいと頼まれました。

ウクライナのウォロディミル・ボンダレンコ地区ガバナーと連絡がつながり、広島のロータリーからの質問を伝えました。また、ドニプロにいるいとこが現地のロータリークラブに入会できないかと尋ねました。会員になればロータリーの救援活動に参加できるようになると思ったからです。状況の緊急さを理解したボンダレンコ地区ガバナーは、すぐにいとこをキーウ・マルチナショナル・ロータリークラブに紹介してくれました。

いとこは今、ロータリークラブ会員としてドニプロで活動しています。

私は以前から、広島で親子のための室内楽コンサートを時々催していましたが、今回は急遽、ウクライナ支援のためのチャリティコンサートとし、バイオリニストの息子と、その友人であるピアニストの岡野純大さんが演奏することになりました。馴染みのあるクラシック音楽の曲を披露し、これまでの収益はロータリークラブを通じてウクライナ支援のために寄付しました。

3月の当初、200人以上の方が関心を寄せてくれましたが、新型コロナウイルスの規制により、コンサートの入場者は1回50人までに制限されました。そのため、4月にもっと大きな会場で再度コンサートを催し、さらに大勢の方に来ていただくことができました。これまでに9回のコンサートを行い(4月22日時点)、4月30日と5月8日にも開催を予定しています。現在までに約120万円の収益があり、全11回のコンサートの総来場者は約1,000人になると予想しています。

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現地の人に直接資金をいち早く届けたいと思い、1回のコンサートが終わるごとに収益をいとこに送り、現地のロータリークラブを通じて、手術を受けた人たちの食料・薬・衣服や、避難民のためのマットレスなどの購入費に充てられました。また、ウクライナで医薬品不足が深刻となっているため、ドイツで医療物資を購入してウクライナ東部に送ることも考えています。資金が現地でどのように活用されているかは、定期的に報告が届いています。

音楽とは、国を問わず誰でも理解できる共通言語だと思います。コンサートの前、息子は「平和の祈りを込めて弾く」と言っていました。

この戦争をどう終わらせるか、被災者たちをどう助けられるか。それだけをずっと考えています。ロシア人とウクライナ人の両方の血を引く私は、ロシア人とウクライナ人は兄弟のようなものであり、平和の中で支え合って生きていくべきだと信じています。

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