アフガニスタン元留学生の命を救え!

寄稿者:勢井由美子(宮崎アカデミーロータリークラブ会員)

日本のアフガニスタン避難民が抱える問題

アフガニスタンの首都カブールが陥落し、タリバンが実権を掌握してからはや1年半。

コロキュームの参加者(命の危険が及ぶため一部の方は顔が見えないよう加工してあります)

元はというと、2001年9月11日にアメリカで起きた同時多発テロを契機に始まったアフガニスタン紛争がきっかけとなっており、それが日本を含む西側諸国の「自由と民主主義」という正義を守る闘いへと発展。タリバン政権打倒後にアメリカ・NATO軍が駐留を続けながら、この国を二度とテロリストの温床にしないための国づくりが行われていました。

日本はアフガニスタン復興支援として、祖国の将来を担う若者への教育支援を行い、日本政府国費による留学や国際協力機構(JICA)の協力で数多くのアフガニスタン人が日本の大学で学びました。以来、日本へのアフガニスタン人留学生の数は、20年間で約1400人にのぼります。

しかし、タリバンが再び政権を掌握した2021年8月以降、民主主義国である日本につながりがあることや、アフガニスタン旧政府で働いていたことを理由に元留学生たちが脅迫や迫害を受け、自身と家族の安全を確保するために日本に避難し始めました。

ただ、そこには大きな壁があります。日本政府はウクライナ避難民への対応は行っているものの、ほかの国については基本的に移民は受け入れていないため、アフガニスタン避難民が日本に住める期間は1年間だけなのです。受け入れ現場での具体的なサポートは民間団体やNGOが受け持つ形になっていますが、避難一年間で日本語を習得させ日本での就職先を見つけられなければ、結局はアフガニスタンに還されて命の危険にさらされることになります。宮崎大学の先生方も救済を開始し、その中に私たち宮崎アカデミーロータリークラブの会員がいました。

宮崎に避難しているアフガニスタン元留学生は、当時のことをこう言います。「みんな理由もなく殺された。誰がどんな理由で殺されたのかが分からないほど状況は深刻だった。とても怖かった。私も殺されるかも知れないと思って、国を脱出しようと決断した」

アフガニスタン人道支援コロキュームを開催

そのようなアフガニスタン避難民のために少しでも何かできることはないかと思い、私たちのクラブは、神戸在住のアフガニスタン人アーメッド氏をお呼びしての基調講演、そして元留学生ご家族から直接お話を聞きながらのパネル討論というコロキュームを開催しました。

学生ボランティアによる活動報告

また、学生ボランティアの「アフガニスタン人に日本語を話そう会」の活動報告もしてもらいました。現在、アフガニスタン人のお子さんたちが大学の近くの小学校に通えるようになり、今ではかなり日本語が上手になってきたとの報告を受けています。

さらに、アフガニスタンの文化交流としての展示や、食文化の交流としてハラル*認証カレー弁当を販売しました。一般市民にこのハラル認証の存在と味を知ってもらえたことは、大きな意義があったと思います。カレー弁当の収益はすべて、宮崎大学のアフガニスタン人道支援へ寄付しました。

次年度もこのアフガニスタン人道支援コロキュームの開催を計画しています。次回は地区補助金を利用する計画を立て、現在申請中です。

ところで、宮崎ウクライナ避難民支援ネットワーク会長であり元宮崎国際大学学長の隈元正行氏が、今回のコロキュームへの参加をきっかけに、この1月、宮崎アカデミーロータリークラブに入会されました。またもう一人、コロキュームに合わせてアフガニスタン文化のパネル展示を担当してくださった宮崎大学の石川千佳子副学長も、同じく1月に入会されました。

コロキュームのチラシ(画像をクリックして拡大できます)

コロキュームの元々の目的は避難民人道支援に関する啓発でしたが、文化交流や学生ボランティアによるアフガニスタン支援活動、マスコミの取材によるアフガニスタン避難民の存在に対する認知向上、さらにはロータリークラブへの入会など、大きな実りがありました。これは、現在の世界で次々と起きている悲惨な暴力に対する人びとの強い危機感の表れであると同時に、ロータリーの活動が地域に理解されれば、自然と認められ、協力者も得られるということを示していると思います。

継続してこそ人びとの意識が定着します。今後は持続可能な体系を作っていきたいと考えています。

開会時、君が代とアフガニスタン国歌を全員で斉唱したとき、涙をこぼすアフガニスタン元留学生ご家族の姿がありました。最後に、私が感動したアフガニスタン人の言葉をご紹介します:

「タリバン政権は、全国民の一部の人間がやっていることです。すぐには解決しないけれど、必ず国際的に認められる国になっていくので、どうぞアフガニスタンを見捨てないようお願いします」

日本人ロータリアンとして、ここ日本で国境を越えて人を思いやり、大切にする人権意識を喚起することが、世界の平和につながっていくものと信じています。

命の危険が及ぶため一部の方は顔が見えないよう加工してあります

*ハラル=イスラム教を信仰するムスリムの人びとが食べられるもの。

【寄稿者プロフィール】
勢井由美子(せい ゆみこ)

歌・作曲・編曲・シンセサイザー演奏を通じて音楽活動を行う。宮崎大学特音ピアノ科卒業。宮崎大学客員講師。1993年より音楽ボランティアグループ「小枝の会」として障がいのある人、重い病気の人、介護を要する人たちの詩や短歌や俳句を曲にして贈る活動に従事。作曲提供数は計約800曲。歌人とのコラボで被災地(陸前高田市、オーストラリアのパース等)での支援コンサートも行う。2020年からは生活困窮者、医療ケア児への支援も開始し、命の大切さ、感受性の窓を開くことの大切さ、音楽の持つ癒し、心の問題についての講演など幅広く活動。国際ロータリー第2730地区社会奉仕副委員長(2021~)。

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アフガニスタン元留学生の命を救え!」への8件のフィードバック

  1. 勢井さん
    素晴らしい寄稿をしてくださいまして、有り難うございます❗
    第2730地区・宮崎アカデミーロータリークラブの皆さんの思いが伝わってきます。
     アフガニスタン元留学生の方々も元気が出ると思います。
     支援の輪がこれから更に拡がって行くことを切に願ってます。

     宮崎中部グループガバナー補佐  藤本範行

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    • 第2730地区宮崎中部グループ藤本範行ガバナー補佐。コメントありがとうございます。当日もずっと参加していただきました。感謝申し上げます。これからも薬王寺会長、そして明石会長エレクトにご指示頂きながらみんなで頑張っていきたいと思っています。引き続きよろしくお願いいたします。勢井由美子

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  2. 宮崎アカデミーロータリークラブ 会長の薬王寺と申します。
    当クラブは宮崎大学を拠点(例会場)として5年前に創立されました。
    過去アフガニスタンから宮崎大学に来て農業などを勉強された7組の元留学生の皆さん、またそのご家族が、日本に避難して来られたのをお聞きして、なにか支援できることはないかと模索した中、まずはたくさんの方にこの事実を知っていただこうということで、このコロキュームを開催しました。
    本文中にもありますように日本に避難することで危険を回避できたとしても、今後この地で生きていくためにはたくさんの問題があります。私たちは今後も継続して元留学生のご家族に、支援、サポートを続けていこうと考えております。

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    • 薬王寺文宏会長。補足説明をありがとうございます。おっしゃる通りです。「今後も継続して元留学生のご家族に、支援、サポートを続けていこう」これをしっかり実行してゆきたいと思います!

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  3. 薬王寺文宏会長 殿
    勢井由美子 殿

    拝啓

    貴殿益々御清祥の事と御慶び申し上げます。
    平素は格別の御高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
    何時も御世話に成り、誠に有難う御座います。

    この度の、2022年10月30日に開催されました、宮崎アカデミーロータリークラブ主催、宮崎大学・アフガニスタンの現状コロキュームを企画運営して下さり、誠に有難う御座いました。アフガニスタンの人々の、声の届かない声を代表して、心より感謝申し上げます。有難う御座いました。
    アフガニスタンの人々は、1979年の旧ソヴィエト連邦の侵攻後、国が崩壊の一途を辿りました。永い永い年月が流れ、43年経過致しました。社会のありとあらゆる構造が破壊され、膨大な数の戦死者と、夫を戦地で失った未亡人と、両親を失った戦災孤児、国内避難民、海外難民、亡命者とが溢れ返り、アフガニスタンの人々が、どうすれば国家が復興できるのか?と、自国の復興に疑問・疑念を抱くまで、ことごとく政治・経済・社会インフラ・産業システム、統治構造の全てが壊滅してしまいました。利権や汚職、権力と金の乱用が、この国を根底から揺さぶったのであります。しかしながら2002年以降から徐々に海外へ留学した学生や、知識や技術を身に着けました若い世代が、国の再興と発展に一生懸命に取り組む者達も、少しずつ少しずつ、徐々に徐々に、新しい芽を出し、根を張ろう、茎を丈夫に育てよう、土に栄養を蓄えようと、必死に頑張った者達の成長も御座いました。現在の宮崎大学でお世話に成っております元留学生たちが、その世代で有り、『アフガンの新しい芽』で、御座います。彼らが直面しているのは、政権交代という簡単なものではなく、議会制民主主義システムから、首長国連邦制システムへの変革に、大きな影響を受け、本国を離れ、日本で生活していく事を選択した方々で御座います。日本政府も繰り返し伝えております様に、アフガニスタンの人々が豊かに成って貰える知識人を育てる目的でPEACE研究制度がJICA様主導で構築された計画と目的で有り、日本で個人が生活する事を念頭に置いたものでは御座いません。これからも日本政府はアフガニスタンの人々へ、復興のメカニズムを、或いは国造りのノウハウを伝授・教授していくものと存じますが、容易な事ではない事も事実で御座います。若く新しい芽である、日本在住のアフガニスタン人は、何れ本国へ帰還し国造りの柱となるべく活躍を期待されております。またアフガニスタンにいる国民も、費用と時間を掛けた海外留学生たちに対し希望と期待を持っている事も忘れてはなりません。誰が国造りをするのか?誰が次の、そしてさらに未来の世代にアフガニスタンを引き継ぐのか?アフガニスタンの国民、そしてアフガン国内にいる有識者・知識人・文民団、また海外にいる知識と技術を身に着けたアフガニスタン人、全員でアフガニスタンの復興をしていかなくてはなりません。しかしながら同時に国際社会の一員としてアフガニスタンの人々だけでこの多難で労苦を伴う一大事を乗り越える事は到底出来うるはずがありません。アフガニスタンの平和と安寧には、或いはアフガニスタンの人々が人間として最低限度の文化的な生活を全うするには、日本の方々の温かい御支援が無くてはならないのであります。きっと未来に於いてアフガニスタンは、この大恩を日本に返せる日が来るものと信じて止みません。何卒、細くとも息の永い御支援御鞭撻賜りたく、アフガニスタンの人々を代表し、この度の数え切れない御恩に感謝申し上げます。誠に有難う御座いました。

    薬王寺文宏会長殿、勢井由美子殿、宮崎アカデミーロータリークラブ様、宮崎大学様の、益々の繁栄と御活躍を祈念致します。今後共、何卒宜しくお願い致します。
    心より有難う御座いました。

    敬具

    K.S.N.アーメッド

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    • K.S.N.アーメッドさま。大変ご丁寧なコメントを頂き、益々切実な思いを重ねているところでございます。ひと言で平和構築と言うことの想像を絶する深さ広さに怖ささえ感じております。しかしながら、一歩でも進むべき方向に歩もうと思います。ロータリーの真の力を私は信じております。また色々と教えてくださいませ。頑張って参りましょう‼️

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  4. 勢井由美子様
    素晴らしい寄稿文、拝読いたしました。少し前、たまたまテレビでアフガニスタンからの避難民、元留学生の置かれている厳しい状況について知り、私にできることはないだろうかと心に強く残っておりましたので、このたび勢井様の寄稿文で宮崎アカデミーロータリークラブ様の取り組みを知り、大変感服しています。クラブの活動によって、私たちの一人でも多くがアフガニスタンでの人権侵害に関心を持ち、その思いが支援につながっていくと思います。私もささやかながら地域でフィランソロピーに取り組んでおりますが、民の力が国を動かす、と確信しています。私たちみんなが関心を持ち続けることが、必ず大きな力となると思っています。
    がんばりましょう!

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    • 熊西地域振興財団代表理事・熊西乃里子様。素敵なコメントを頂戴しました。実は、フィランソロピーっていう言葉を知りませんでしたから調べてみました。「私たちは、性別、年齢、障がいの有無などに関係なく、社会を構成するそれぞれの個人が主体的に活き活きと役割を果たす社会こそが真の民主主義社会であり、個人のフィランソロピーこそがその原点である」と! そうですね!民の力が国を動かすんですよね!! 沢山の勇気を頂きました。乃里子様を見習いながら私も頑張ります。コメントありがとうございました。

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