佐賀の自然といきもの:環境保全活動

~佐賀市内河川の外来種対策と希少種保護

寄稿者:古川 尋美(佐賀南ロータリークラブ会員、RI第2740地区グローバル補助金・平和フェロー小委員会委員長)

佐賀市中心部には、江戸時代の初めに佐賀城下の町づくりの一環でつくられた大小の水路網が張り巡らされています。水は多布施川から供給されており、多布施川も水路網も人がつくったものです。人がつくったこの水辺環境に、トンボ、淡水魚、水草など、さまざまな水生生物が住みつき、繫栄しました。

希少淡水魚の多さは特筆すべきで、絶滅の恐れがある生物として環境省がリストアップしているニッポンバラタナゴ、カゼトゲタナゴ、カワバタモロコなど、「イリオモテヤマネコ」や「アマミノクロウサギ」に匹敵するような希少生物が人の身近にいるのです。これだけの希少生物が人の生活圏に共存していることは、全国的にも珍しく、佐賀市の宝物と言えます。

その水生生物の楽園が、いま危機に直面しています。その原因の一つが、外来水生植物コウガイセキショウモです。コウガイセキショウモは、アクアリウムプランツ(アクアリウム水槽用水草)として輸入・市販され、購入した人が野外に流出させたと考えられています。その旺盛な繁殖力から生態系への影響が懸念され、環境省が重点対策外来種に指定しています。川底に絨毯のように広がって空間と光を独占し、魚が泳ぎ回ろうにも身動きできないようなところすらあります。

呼びかけチラシ(画像をクリックすると拡大できます)

そこで、佐賀南ロータリークラブの主催で除去活動をすることになりました。コウガイセキショウモは佐賀市内の複数の場所に侵入していますが、除去活動の場所として多布施川の特定箇所を選んだのには理由があります。外来種そのものが問題視されていますが、元をたどれば人間の身勝手な行為が原因です。残念なことに、外来種問題や在来生物の保全に無関心な人が少なくありません。地域の人びとが無関心である限り、問題は解決しません。このため、地域の人に関心を持ってもらえるよう、人口が多くて人目につきやすい、佐賀市民であれば誰もが知っている多布施川、特に数年前からコウガイセキショウモが密生していている下流を活動場所に決めました(呼びかけチラシ参照)。

次に検討したのは除去範囲と除去方法です。密生範囲の下流側だけで除去しても、上流側からまた広がってくるのであまり意味がありません。また、一度にすべての除去は不可能です。このため、密生範囲の最上流部を駆除対象エリアとしました。除去作業中に株が下流にさらに広がらないよう、作業エリアの下流側に支柱を複数立ててネットも張ることにしました。

除去方法は、胴長を着用して川に入り、佐賀市から借用した河川管理用の道具を使ってコウガイセキショウモを引き上げるというものです。

活動当日の3月20日には、当クラブ会員23名のほか、地元のNPOや中学校、市職員、マスコミ4社、市民(応募者)など、総勢65名が参加しました。また、当日には参加できなかったものの、計画や手配に協力してくれた方々も含めると、延べ100人程度がこの事業に参加したことになります。さらに、除去活動に先立って地元の中学校全学年向けの事前学習会も行いました。

川から引き上げたコウガイセキショウモは、軽トラックで処分場まで運びました。幸い水路が発達している佐賀市では、河川清掃用の道具も充実していて、除去した水草などを運ぶ小さな船を佐賀市が所有しています。この船を借用して、除去したコウガイセキショウモを軽トラック待機場所へ船で運ぶことができました。軽トラック待機場所までかなりの距離があり、川底も泥が堆積して足がとられるなど体力が必要でしたが、作業に参加した龍谷学園の生徒さんが若い力で大いに貢献してくれました。

今回除去したコウガイセキショウモは、全体のほんの一部にすぎません。しかし、地元の学校の生徒さんや一般の方々の参加もあり、活動の目的の一つであった「地域の人に関心を持ってもらう」きっかけになったと感じています。活動に参加した中学生たちの感想からも、そのことがわかります:

  • 「外来種の危なさについて知ることができた」
  • 「はじめは大量に外来種が取れていたけど、みんなで協力した後は取れる量がどんどん少なくなり、駆除活動にやりがいを感じた」
  • 「知らなかっただけで、こんなにたくさんの希少な生き物が身近に住んでいる、その生きもののため、地域のために活動ができて気持ちが明るくなった」

外来種駆除は一朝一夕に解決できる問題ではありませんが、一人でも多くの人がふるさとの自然や生き物に関心を持ち、それを守る行動へと発展させていくことを願って、これからも活動を続けていきたいと思います。佐賀南ロータリークラブが投げかけた活動案に賛同し、事前調査、関係機関との調整、作業用具の準備、広報活動、最終調整確認、活動実行などで協力してくださった皆さん、おつかれさまでした。

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※編集者より:ロータリーは、国連環境計画(UNEP)との新たなパートナーシップの一環として淡水保全のためのコミュニティアクションを開始しました。ロータリークラブとローターアクトクラブは、単一または合同で、地元の河川、湖、湿地帯などの淡水資源の保全と回復に取り組むことで、この新しいプログラムに参加できます。詳しくはこちらのウェブページと「よくある質問」(PDF)をご覧ください。クラブが既に淡水資源の保護・回復に取り組んでいる場合は、既存のプロジェクトをご登録ください

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