山火事・森林火災を未然に防ぐグローバル補助金プロジェクト

~日本で初めて承認された「環境」重点分野でのプロジェクト

寄稿者:大澤 力(新潟西ロータリクラブ)

切迫していく地球環境

世界気象機関(WMO)とコペルニクス気候変動サービスは、2023年6月~10月の5カ月間連続で地球の平均気温が過去最高を更新したと発表しました。この世界的な高温は、エルニーニョ現象の強まりなどが大きな影響を及ぼしていると考えられますが、それだけでは説明が難しく、長期的な地球温暖化(気候変動)の影響が加わっていることが確実です。

そんな2023年の夏、世界各地から山火事や森林火災のニュースが多く報告されました。8月にはハワイ、マウイ島の火事でとても痛ましく凄惨な映像がTVのニュースで報道されました。まさに、ああいった山火事や森林火災を環境整備によって未然に防ごう、起こったとしても被害を最小限に食い止めよう、というグローバル補助金プロジェクト(ドイ・ジョラケ丘陵の環境保全)についてご紹介します。

きっかけは学友からの一通のメール

このプロジェクトは、ロータリーの新しい重点分野「環境」にまつわる3年にわたる継続事業(2022年6月開始)で、第3360地区のメーチャンロータリークラブ(タイ)と第2560地区の当新潟西ロータリークラブが援助国側パートナーとなり、「ほほ笑みの国」タイ”で現在も継続実施されています。プロジェクト立ち上げのきっかけは、ロータリー学友からの1通のメールでした。送り主は、2019-20年度、当地区財団奨学生だった長谷部千紘さんです。今現在広島で就職されている彼女からのメールには「留学先の現地で訪問したメーチャンロータリークラブでお世話になったジョージさんから、タイ北部で計画しているグローバル補助金事業にあなたのスポンサークラブにも参加してほしい、というご案内が来たので是非ご検討をお願いします」と書かれていました。正直、自分自身や当クラブにとって、それまで縁遠いグローバル補助金事業だったので、長谷部さんの存在なくしては始まらなかった事業だったと思います。ロータリー学友が現地タイとの懸け橋となり、非常に小さなつながりが、とても大きな地球規模での環境問題に取り組むグローバル補助金プロジェクトへと発展していったのです。

森林火災を未然に防ぎ、地球環境を守る

ドイ・ジョラケとは、タイ北部の丘陵地帯の名前で、「ドイ」はタイ語で「丘」、「ジョラケ」は「ワニ」を意味します。巨大なワニが眠っているような形になっているのが名前の由来となっている自然が豊富な丘陵地帯ですが、残念なことに3年連続で森林火災が起こり、そのたびに数日間、または枯葉や小枝などが燃え尽きるまで続くそうです。地球温暖化(気候変動)が原因と思われるこういった大規模な山火事や森林火災は、大量の温室効果ガス(CO2)を排出します。このプロジェクトの目的は、森林火災発生を防止し、CO2発生を抑止することにより、地球環境を守ることです。

活動内容は次の通りです:

1.29の村でのワークショップ:各村から30人が参加し、火災防止のためのワークショップに参加します。これらの参加者は、プロジェクト活動のボランティアとなります。

2.50キロメートルにわたる防火帯の構築:上記ボランティアやその他のボランティアを募り、防火帯(延焼被害を食い止めるための帯状の地域)を3年かけて構築します。

3.10キロメートルのジョギングトレイル建設と標識の作成

4.40の小さな堤防建設と植樹

5.森林歩行パトロール活動

このプロジェクトは日本で初めて承認された環境重点分野での人道的奉仕のグローバル補助金プロジェクト、というオマケがつきました。「世界に貢献する、継続した奉仕プロジェクト」という、当クラブのビジョン・行動計画にも適っていますし、完了予定の2025年に創立50周年を迎える当クラブにとって、この上ない記念事業となることでしょう。また、このプロジェクトが山火事や森林火災で困っている世界中の人びとに希望を生み出すことを心から願っています。

<寄稿者プロフィール>
大澤 力(おおさわ つとむ)
株式会社東プロ代表取締役。2011年に新潟西ロータリークラブに入会。クラブ幹事、クラブ会長、第2560地区RLI推進委員会副委員長、第2560地区戦略計画委員長と歴任。ロータリー財団マルチプル・ポール・ハリスフェロ(+3)、第6回米山功労者マルチプル

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