ウクライナから届いた日本への感謝のメッセージ

日本のロータリーが仮設住宅設置プロジェクトを支援

寄稿者:新井和雄(下館ロータリークラブ会員、国際ロータリー第2820地区パストガバナー)

ウクライナから届いた日本のロータリーへの感謝のメッセージ動画

ウクライナからのSOSに日本のロータリーが応える

ウクライナ第2232地区は、2021年9月に第2820地区(茨城)がホストを務めた「地球環境保全グローバルプロジェクト」に参加し、ウクライナ各地で海岸や河川、湖沼、各地の公園の清掃を行ってくれました。その縁もあって、今年2月23日にはオンラインでロータリー117回目の誕生日を一緒に祝い、そこでは国際紛争が始まる気配などまったく感じられませんでした。ところが一夜明けた24日、ウクライナ各地がミサイル攻撃され、多くの市民が被災したと昨年度ガバナー(2021-22年度)のボンダレンコさんから連絡がありました。

日本とウクライナのガバナーによるウクライナ支援緊急会議(2022年6月13日)

ボンダレンコさんの悲痛なSOSを受け、早速ウクライナと関係のある日本各地のクラブが現地のクラブと協力し、被災者への援助を始めました。また、日本の34地区もそれぞれ募金をしたり、ウクライナのための災害救援基金に寄付をしたり、被災地のロータリークラブに資金援助をしたりしました。

ロータリー財団に災害救援補助金を活用したウクライナ支援の仕組みができあがると、第2630地区(三重・岐阜)の昨年度ガバナーである浦田幸一さんが6月にウクライナと日本の同期ガバナーを招集し、Zoomを使ってウクライナ支援に関する緊急会議を開きました。会議では、ウクライナ各地で何が起きているのか、どの地域の誰が一番困っているのか、ロータリーは何ができるかなど、ボンダレンコさんから詳しい説明がありました。

災害救援補助金を活用して仮設住宅を設置

緊急会議での説明を受け、日本のロータリーとしては、災害救援補助金を活用して特に強い要望のあったムシュン村へ仮設住宅の設置をすることと、各地方都市へ救急車・消防車などの特殊車両を寄贈することにしました。

長閑な田園が広がるムシュン村は、ロシアとウクライナの首都キーウを結ぶ交通要所であったために激しい戦闘に巻き込まれていました。多くの村民が家を失い、その惨状がボンダレンコさんから伝えられました。

ムシュン村で仮設住宅を設置しようと決めたものの、日本ではウクライナ人道支援のために災害救援補助金を活用した経験はありません。今から申請して、いつ承認されるのか?ウクライナに送金できるのか?仮設住宅の製造・設置業者は操業を続けられるのか?ウクライナに厳しい冬が訪れる前に仮設住宅を引き渡せるのか?

日本からの1棟目につけられた第2820地区のプレート

これらの疑問に対して確実な答えが何一つない中で、まず第2820地区がウクライナのパストガバナーであるセルギーさんと協力して申請書を作成し提出したところ、わずか5日でロータリー財団から承認が下りました。これと同じ申請をほかの18地区でも行っていただき、補助金が次々と承認されました。承認の7日後にはプロジェクト口座に補助金が入金されました。

仮設住宅の製造業者であるインデップススチール社により約1月で2棟が完成し、9月15日には日の丸の付いた2棟の仮設住宅が設置され2家族に引き渡されました。また、日本のロータリーからの支援に対してウクライナから感謝の動画メッセージが届き、11月のロータリー研究会で上映されました。

ムシュン村の住宅再建は、ロータリーによるウクライナ復興支援のシンボルとなっています。ムシュン村には、日本の19地区を含め、世界各地からの支援により約200棟の仮設住宅が順次設置されており、さながら「ロータリー村」の様相を呈しています。紛争に巻き込まれ、すべてを破壊された村民たちが、厳しい冬の寒さを乗り越え、再び希望を持って自宅や生活基盤を取り戻すための第一歩となるでしょう。

ロータリーが平和構築と紛争予防に取り組むことの意義

中央が第2232地区パストガバナーのボンダレンコさん。ラキフ・ロータリークラブが運営するボランティアセンターにて。

各国政府による「国家の安全保障」は、国民の生命と財産を守るためにとても重要な概念です。他方、理念や価値観を共有するグローバルな組織であるロータリーは、「人間の安全保障」という地球全体の視点から、平和構築や医療・教育・地域経済の支援、貧困緩和などを通じて、争いの火種を消してゆくことができます。

ヒューストン国際大会でウクライナの国旗が入場した時、会場にいたロータリーファミリー全員がスタンディング・オベーションで迎えました。鳴りやまない拍手の渦の中にいた私は、平和が当たり前と思って何も行動しない消極的平和を批判しながら、皆が少しづつ困った人たちに手を差し伸べるような積極的平和の旗手となるのがロータリアンなのだと強く感じました。

【寄稿者プロフィール】
新井和雄(あらい かずお)

茨城県下館市(現筑西市)生まれ。株式会社リジリエンス創業者。国際ロータリー第2820地区(茨城県)パストガバナー(2021-2022年度)、地区ロータリー財団総括委員長、下館ロータリークラブパスト会長(2015-2016年度)

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ウクライナから届いた日本への感謝のメッセージ」への1件のフィードバック

  1. 暖かい暖房の中過ごしている私達
    そしてライフラインが破壊され寒い日々を
    過ごしいるウクライナの人々
    私達はどの様に手を差し述べられでしょうか?
    侵攻直後は私達は何とかしなければと一生懸命に募金活動等をした。
    しかしながら紛争も日常化し
    支援疲れの最近
    もう一度紛争直後の支援の輪を復活しなければ
    思っています。
    誰かが旗を振らなければ。

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