日本留学で出会った被爆者との再会

~元平和フェローである私が考えた積極的平和と核軍縮の関係

記事:ロレーナ・ロドリゲス(2017-19年度ロータリー平和フェロー)

カリフォルニアで再会した川妻さん(右)と。

宿命、運命……。それを何と呼ぼうと、私は「偶然」というものは信じていません。私たちの体験は、自然、数、時間、事象、観念といった繊細な体系の中に織り交ざっています。最近に起こったいくつかの非偶然的なできごとも、私のこれまでの人生体験が紡いできた一本の糸とつながり、この記事を書くにいたっています。

ここに紹介する私のストーリーは、ロータリー平和フェローシップで修士号取得のために日本に留学し、初めて被爆者に出会ったときから、ロータリー積極的平和アクティベーターとなった最近までの、5年間にわたるストーリーです。

川妻さんとの再会

2日前、私はIEP(経済平和研究所)の世界平和度指数2022の発表イベントに出席しました。このプレゼンテーションはオンラインで行われましたが、そこで、核兵器問題に関するロータリーの立場についてあるロータリアンが投稿した質問を目にしました。たまたまその1週間前、私は被爆者である川妻二郎さん(東京米山友愛ロータリークラブ会員)の証言をスペイン語に翻訳したばかりでした。川妻さんは、私が日本に留学中に出会ったロータリアンで、初めてお会いしたときのことを今も鮮明に覚えています。1945年8月6日の出来事を語る川妻さんの深いまなざしを見た私は、当時にタイムスリップして彼が体験した恐怖を垣間見た気がしました。

あの最初の出会いの後、川妻さんともうお会いすることはないだろうと思っていました。ですから、約2年が経ち、米国カリフォルニア州での積極的平和アクティベーター研修会の最終日、ホテルのフロント付近で空港行きの送迎車を待っていた私が、そこで川妻さんの姿を見たときの驚きを想像してみてください。ほかの二人の方と一緒にロビーの椅子に座っていた川妻さんは、翌日から始まる平和会議で講演するためにカリフォルニアに来ていたのです。

この再会がきっかけで、私は学んだばかりの「積極的平和(Positive Peace)」の枠組みを核軍縮に適用する方法について考えるようになりました。平和フェロー、そして積極的平和アクティベーターとしての近年の体験を通じて、この問題に対する洞察も深まっていると感じています。以下に、私が考えたことについて少し書いてみたいと思います。

積極的平和と核軍縮

「積極的平和」とは、平和が持続する社会をつくり、維持するための態度、制度、構造です。言い換えれば、社会的不平等といった構造的暴力がなく、人間が基本的ニーズを満たし、健康でいられるのを妨げる社会的構造や制度的な要素がないことです。その一方で、「消極的平和」とは直接的暴力、つまり戦争や身体的虐待などの目に見える暴力がないことを指します。

核兵器禁止に賛成の立場を取ることは、積極的平和と消極的平和の両方につながります。意図的であろうと事故や誤算のせいであろうと、核兵器の使用によって大勢の命が奪われ、数十年・何世代にもわたって人道的・環境的に深刻な結果をもたらします。爆弾だけでなく、最近は新たな脅威も生まれています。核兵器が廃絶されれば、意思決定者が受け取る情報を操作して核攻撃をするように仕向けるサイバー攻撃などの付随リスクもなくなります。

核兵器禁止によってもたらされる積極的平和は多面的です。核兵器は、国家間の恐怖心と不信感を増殖させ、調和的で安定した政治的関係を実現する機会を台無しにします。歴史的に見ても、こうした兵器の原理の裏には常に差別がありました。 核保有国は、先住民の住む植民地や、先住民の先祖とのつながりが深い土地や水域で、繰り返し核実験を行ってきました。何十年もの間、先住民の人たちは追いやられ、移住を余儀なくされただけでなく、放射線を浴びた環境や食物源によってがんや精神疾患など悲惨な人道的結果に苦しみました。核兵器の生産、維持、近代化にかかる膨大なコストのために、公的資金が医療、教育、災害救援やそのほかの不可欠なサービスから奪われています。核兵器が廃絶されれば、あらゆる形態の構造的暴力の根絶につながっていきます。

今日この記事を書いているのは、被爆者の方々の体験に光を当て、敬意を示したいと感じたからです。私が学んだことをロータリーファミリーにも伝え、関心の種をまきたいと思ったからです。川妻さんの平和推進活動について、また皆さんがその活動をどう支援できるかを知りたい方は、以下に挙げたリンクと記事をご覧ください。また、2019年ロータリー国際大会本会議でのトム・サウアーさんによる講演の動画クリップもご覧ください。アントワープ大学の准教授であるサウアーさんは、ロータリー学友世界奉仕賞の受賞者です。

【寄稿者プロフィール】
ロレーナ・ロドリゲス(Lorena Rodríguez)
平和構築の専門家、研究者、アーチスト。ロータリー平和フェローとして国際基督教大学(東京)で政治・国際研究の修士号を取得し、優秀な成績で卒業。母国コロンビアでの平和構築活動に携わり、2016年の和平プロセスではコロンビア平和高等弁務官の下で働く。また、価値の回復と二文化併存のリソースについて先住民や農民のコミュニティと協力した豊かな経験を持つ。La Realidad – Experimental Station (コロンビアのアマゾンを拠点に平和をめざして保全と料理を実験している研究所)の共同創設者。カリフォルニアに在住し、司法制度の影響を受けた人びとに法的・社会的サービスを提供するコミュニティリソース・イニシアチブの緩和スペシャリストとして働く。現在の関心は、草の根レベルで平和に向けた新しい世界を生み出すツールとしての関係性、文化、芸術。

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