理数系分野のジェンダーギャップ解消をめざす

~女子高校生を対象としたワークショップでIT分野や社会問題への意識を喚起

寄稿者:川妻 利絵(広島西ロータリークラブ会員)

近年、理数系分野におけるジェンダーギャップが世界中の課題となっています。その中でも日本は、2021年ジェンダー平等指数が156カ国中120位であり、特に、大学の理数系分野における女性の割合はOECD加盟国では最下位というデータも発表されています。日本ではいまだに「理系=男性」という固定概念が強く、保護者や教員、教材が女子生徒を理数系選択から引き離しているとも言われています。

IOT(モノのインターネット)やAI(人工知能)などの新興技術の台頭で第4次産業革命の波が訪れている中、IT産業におけるジェンダーギャップは世界的課題として注目されています。わが国でもIT分野におけるジェンダーギャップの是正は重要性が高く、教育を通して課題解決することが必要と考えられていますが、特に地方都市ではIT分野を学ぶ環境が充分ではありません。

女子高校生が学び、考え、自分の思いを世界に発信

そのような課題を解決するために計画されたのが、今回の国連ユニタールと一般社団法人Waffleとの共同開催による、広島県内の女子高校生を対象とするオンライン研修「コーディングブートキャンプ~SDGsアイデアを形にする~」です。

広島西ロータリークラブが協賛したこのワークショップでは、SDGsと国際交流を通して地球規模の課題解決を考えるきっかけを与えつつ、IT分野におけるハードルを解消するためのプログラミング技術を指導しました。また、WEBサイトの制作を通して、自分で目的を設定して発信する能力を身に着け、自分の思いを世界中に発信する喜びを体験してもらいました。

その後、国際女性デーの3月8日に行われた公開セミナーで、代表5名の学生が成果を発表し、それに対して国連ユニタール親善大使の為末大氏、Waffle代表の斎藤明日香氏、イラクでプログラミングの指導をしているRaghad Hav氏の3名から講評をいただきました。

WEB制作については講義だけではなく、2~3名のグループごとに世界各地で活躍する日本人女性メンター1人がついて指導にあたりました。

ワークショップではイラクの女性たちとの交流も行われました。イラクと日本の女性たちは、理数系やIT系は苦手だろうという固定概念が共通認識として現在の社会にあり、実際学ぶべき環境も少ないのが現状です。そのような中、特にイラクの女性たちとの交流やRaghad Havさんの話の中で、厳しい戒律の下で女性がジェンダーギャップを強く意識して自立していくために学んでいるという話がありました。パンデミックだからこそできたオンライン研修で、世界とのつながりを実感できたとても良い機会でした。

女性として考えること

私も含め女性として育ってきた環境の中で「女性だからできない」とか「女性はこうあるべき」といった勝手な思い込みやバイアスのようなものが、社会はもちろん、実は私たち女性の中にもあります。それが女性の社会進出を遅らせている大きな要因の一つになっていると私自身も反省しました。

私自身を振り返ってみると女子校に育ち、結婚して家を守るものという環境に置かれて育ちましたが、人生の転機で「清水の舞台」から飛び降りるほどの覚悟をもって経営者の道を歩み始めました。

立場が変わって見えてくるのは、さまざまなジェンダーギャップであったり、女性自身が強く持つバイアスのせいでチャンスを逃しているケースが少なくないことです。

世界的な課題に目を向けた時、女性が持つ感性や視点により今までとは違うアプローチで解決策が見つかることも少なくありません。この度の成果発表の中にも、女性の視点や若い人たちの視点で物事をとらえているものが多く、男女の区別ではなく、個々の良いところを活かすことが求められるように感じました。

まさにシェカール・メータ前国際ロータリー会長が掲げた「女児のエンパワメント」が示す通り、女性がきちんと自立できて初めてジェンダー平等が実現すると思っています。今年度には女性初の国際ロータリー会長が誕生し、ロータリーの世界でもジェンダー平等へ一歩前進しました。そのジェニファー・ジョーンズ国際ロータリー会長も、女子の識字率向上を掲げられています。

今後、理数系を選択する女性やIT分野で活躍する女性が増えることで、人材不足の緩和や女性の賃金水準の上昇などジェンダーギャップの解消が期待できます。今後、このような研修が多くの場所で開催されることを願うとともに、女性ロータリアンとしてその一翼を担えるように努力をしていきたいと思います。

【寄稿者プロフィール】
川妻 利絵(かわつま りえ)
広島県在住。専業主婦だった2005年に急遽、家業のひろしま管財(総合ビルメンテナンス業)の経営を引き継ぐ。高齢者や障がい者の雇用だけでなく、インドネシアからの技能実習生の受け入れと女性の活躍などダイバーシティに力を注いでいる。広島県ビルメンテナンス協会理事、広島県警備業協会理事、広島経済同友会常任幹事、広島西ロータリークラブなどいずれも女性役員登用初。2018年より広島西ロータリークラブ所属。国際ロータリー第2710地区2021-2022年度国際社会奉仕委員長、2022-2023年度国際奉仕部門理事。

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