ミャンマー小学校建設で広がる奉仕の輪

寄稿者:安池 勇人(東京東江戸川ロータリークラブ)

「私の夢は、母国ミャンマーの田舎に小学校を建設することです」

すべては、この一言から始まりました。

2019年7月、私たちはミャンマーに3校目となる小学校を建設しました。

1校目完成式③モーさんの夢を叶える
この事業は2年前から継続する国際奉仕活動ですが、きっかけは2016-17年度に私たちが世話クラブとして出会ったミャンマーからの米山記念奨学生モー・トゥザー・チョウさん(以下、モーさん)でした。

彼女の夢を熱く語る姿、そして、米山奨学生として日本で懸命に学び、クラブの例会や奉仕活動に積極的に参加する姿にクラブ会員の誰もが心を動かされ、その夢を一緒に実現できないかと動き出したのでした。

彼女の言葉をきっかけにミャンマーの教育事情を調べてみると、公立の小学校が圧倒的に不足している現状がわかりました。ミャンマーの識字率は90%以上と開発途上国の中でも特に高い水準ですが、それは元々、寺院や地域で運営している無償の寺子屋がたくさんあり、貧しい子供たちも最低限の教育を受けることができているからなのです。

しかしこの寺子屋は、寺院や地域住民の寄付のみで建設・運営されているため、校舎の老朽化だけでなく、教師の給料をはじめ、教科書や文房具、机などの備品も満足にそろえられず、公立と比べるとレベルの低い教育しか受けられないのが現状です。学校を建設する国家予算が不足していることもあり、寺子屋は増え続けていますが、小学校就学率は98%に対し、中学校修了率が41%であることからも、初等教育に課題があることは明白です。

モーさんが抱く夢の意味とその必要性を理解した私たちは、クラブとして本格的に支援に乗り出そうと考えたのでした。

1校目の完成、そして初めて味わった感動
初めてのミャンマーに戸惑いながらも、2度の下見と現地の協力団体との打ち合わせを綿密に行い、翌2017-18年度に地区補助金を活用して1校目の小学校建設が実現しました。この時、地区補助金では足りない資金は、チャリティーコンサートを開催して補いました。

出迎え1そしていよいよ、モーさんと共に迎えた開校式では、子供たちがたくさんの花束を持って私たちを歓迎してくれました。ボロボロだった小さな木造の校舎は、コンクリート製の頑丈な姿に生まれ変わり、壁にはロータリーのロゴが刻まれました。子供たちには、帽子とリュック、お菓子を1人1人手渡しでプレゼント。この時の子供たちの笑顔は今でも忘れられません。そして、最後に子供たちの前で、モーさんが涙ながらに語りました。

1校目完成式②モーさん

モー・トゥザー・チョウさん

「今日、私の夢が叶いました!皆さんもこの新しい学校でたくさん勉強して、決して夢を諦めないでください」と。

この時の感動と村人のあまりにも貧しい暮らしぶりが、私たちの奉仕の心にさらに火をつけたのでした。

広がる支援でつながる夢
翌年、創立50周年という節目を迎えた私たちは、創立記念事業としてクラブ基金から建設費用を捻出して2校目を建設。前回視察したものの、最終的に選ばれなかった村での建設を決め、唯一、心残りだった村長との約束を無事に果たせたのでした。

この時、他クラブや一般の方にも参加を広く呼びかけ、クラブ外から集まった12名の参加者とも感動を共有することができました。奉仕を実践し、それぞれがこの国の現実と向き合ったことで、なんと、この時の参加者全員が帰り間際のヤンゴン空港で新たに寄付を申し出たのでした。

モーさんから受け取ったバトンが、次の一歩につながった嬉しい瞬間でした。

リュック手渡し1この時の浄財を含め、記念式典でクラブが現地の協力団体に寄贈した寄付金、チャリティーコンサートでの収益の余剰金、私たちが提唱するローターアクトが開催したチャリティパーティーでの寄付金など、今まで以上にたくさんの善意が学校を1つ建設できる金額にまで集まり、今年度、3校目の小学校を建設できることとなったのです。

1人の留学生の夢が、多くの人の心を動かし、奉仕の和が広がっていくことを実感することができました。

学んだことをノウハウとして共有
これからの私たちの役割として、引き続きミャンマーの青少年の育成を支援していくだけでなく、私たちの経験やノウハウをより多くのロータリアンと共有し、このバトンを次の誰かにつなぐ手助けをしていきたいと考えています。そのために、私たちの活動の3つの特徴を紹介します。

1.いま一番必要な支援を行う
校舎を立て直すことで公立の小学校として政府から認定されます。認定を受けると、国から教師が派遣され、さまざまな教育サービスが継続的に受けられます。質の高い授業ができることは、特に貧しい村の子供たちの将来を左右するとても重要な支援なのです。

2.現地に信頼できる協力団体がある
3校の建設事業を通じて、次世代の教育を支援している現地のボランティア団体と強い信頼関係が築かれました。学校を必要とする村の選定、下見、通訳、移動や滞在の手配や交渉など、国際奉仕活動に伴う一番不安な要素について情報を現地団体と事前に共有することで、安心して支援活動に専念できます。

3.低予算、短期間で小学校を建設
立派な校舎を建てることではなく、少しでも多くの村に公立の学校を建設し、子供たちに充分な教育環境を整えることが目的であるため、低予算、短期間であることが重要です。村人たちが建設を行うことで1校あたり数十万円、また工期も4カ月程度で完成します。また、現地の協力団体の活動費や手数料なども一切必要としません。30名に満たない私たちのクラブでも、この目的のためにたくさんの善意が集まり、3年度にわたり3校の小学校建設を実現できました。

なかなか行動で実践することが難しい国際奉仕ですが、私たちの経験が新たな奉仕活動のヒントになれば幸いです。

>> 東京東江戸川ロータリークラブ 公式HP

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