人生の70年をポリオとともに

寄稿者:リ・ジョン-グエン(ウォンジュ・ロータリークラブ会員、第3730地区ポリオプラス委員長)

ポリオ根絶の研修で講師を務めるリさん。

朝鮮戦争の終戦から1年後、私は韓国南部の村に生まれました。医療の状況が思わしくなく、生後9カ月でポリオに感染。高熱が数日間続き、両足がまひして動かなくなりました。両親は教師でしたが、当時はポリオに関する知識がほとんどなく、迷信的な方法や祈祷に頼るばかりでした。2歳になったとき、ようやくポリオと診断されました。

松葉づえなしでは歩けませんでしたが、明るく活発な性格だったので、村の友だちたちと楽しい幼少時代を過ごしました。入学してからは通学時に弟がかばんを持ってくれました。級友たちは、階上の教室に行くときは私をおぶってくれましたし、学校近くの丘の上にあった自宅まで送ってくれました。こうした周囲の温かい支えはありましたが、歩行器のネジがゆるんだり、松葉づえが何かにぶつかったりしたときに、転ぶこともよくありました。

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ポリオサバイバーとして ロータリアンとして

寄稿者:小林 操(国際ロータリー第2770地区ガバナー、2019-20年度)

給食トリミング

おいしそうに給食を食べる小林少年

ポリオに罹患して
ロータリー生活の中、自分自身がポリオ(小児まひ)サバイバーであり、いつかは自分の思いを行動に移せれば、と思ってきた私にとって、地区のリーダーになって、いよいよその機会をいただけたことは本当にありがたいことです。

ロータリーは、世界ポリオ根絶推進活動(GPEIを中心に、三〇余年にわたってポリオ根絶活動を行ってきました。その実績は、世界で数十万件だった野生株の症例数が今では2桁に減り、しかもポリオ常在国が世界で2カ国になるところまできたことに示されています。長引く根絶活動から、ロータリアンの中には「根絶は無理」「他にプログラムがある」といった意見もありましたが、世界への約束は必ず守る、という信念の下、私たちは粘り強く活動を続けています。

ポリオは、今では紛争地域に残る感染症という感覚ですが、ワクチン投与が広まる以前は、日本でも多くの人が感染していました。 続きを読む

『ブレス しあわせの呼吸』~鑑賞した会員の声

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©2017 Breathe Films Limited, British Broadcasting Corporation and The British Film Institute. All Rights Reserved

映画「ブレス しあわせの呼吸」が9月7日から劇場で公開されます。この映画は、1950 年代にアフリカでポリオに感染した父親のロビン・カヴェンディッシュとその妻ダイアナの激動の半生を、息子であるジョナサン・カヴェンディッシュが自ら映画化した感動作です。

この映画の公開に向けて、国際ロータリーが協力し、本作の公式ウェブサイト、ポスター、チラシ、映画本編のオープニングクレジットにRotaryとEND POLIO NOW のロゴが入っています。

作品の公開に先駆け、ロータリアンに鑑賞していただき、コメントをいただきましたのでご紹介します。 続きを読む

ポリオが残したもの

~映画『ブレス しあわせの呼吸』を観て

寄稿者:稲村敦子(「ポリオの会」世話役、ポリオサバイバー)

Breathe Inamura photoこの映画の主人公ロビンは、28歳でポリオに罹患。余命数カ月を宣告されて36年、人工呼吸器と共に、世界一幸せに生きた男とその家族の奇跡の実話です。

主人公ロビンはまぎれもなくポリオサバイバーとして生きたのですが、その姿は一般的なポリオサバイバーとは少し違うかもしれません。ポリオを知る人は「えっ!ポリオ?」と思うでしょう。それはロビンが大人になって骨格が完成してから罹患したことと、もうひとつ、ロビンのような致命的とも思える呼吸まひを伴った人の生存率は非常に低かったからです。 続きを読む

『ブレス しあわせの呼吸』 この秋日本で公開

ポリオサバイバーの実話を描いた感動作  9月7日に全国ロードショー

運命の恋に落ち、家族や友人に祝福されて結婚し、最高に幸せな日々を送っていたロビンとダイアナ。ところが、出張先 のナイロビで、突然ロビンが倒れてしまう。診断結果はポリオ、首から下が全身マヒとなり人工呼吸器なしでは息もできない。時は1959年、医師からは「余命数カ月」と宣告される。英国に戻り息子が生まれたが、ロビンは絶望の中にいた。病院を出たいと望むロビンのために、医師の反対を押し切り自宅で看病する決意をするダイアナ。彼女の決断は、ロビンの運命を大きく変えていく――(引用元:KADOKAWA)

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ポリオとともに生きる

寄稿者:小山万里子(「ポリオの会」責任者、ポリオサバイバー)

1歳でポリオに罹患し、40代でポリオ後症候群を発症Mariko Koyama 1

野生株ポリオに1歳9か月頃罹患した私は、もう70年近くポリオと<ともに>生きています。人生最初の記憶は、脊髄穿刺の痛みに耐えていたこと。やがて、ポリオによる障害を隠して生きていけると思えるほどに、麻痺は回復しました。

しかし、40代、仕事に打ち込んでいた時、よいはずの部位に激しい痛みや新たな筋萎縮といった症状が出てきました。当時は、ポリオ後遅発性進行性筋萎縮症という病名でしたが、現在はポリオ後症候群、ポストポリオという病名が一般的です。ポリオ発症から十数年~数十年して新たに症状が現れるのです。発症時、どこまで悪化するのか、治療の方法はと、先の見えない孤独感、不安、症状悪化に打ちのめされて、電車ホームに立っていると思わず飛び込もうとする自分が恐ろしかったのです。「先生、私は松葉づえですか、車いすですか」と問いかけ、ドクターショッピングをし、左足だけと思っていた症状が右足にも両手にも出てきて、耐えがたい思いでした。 続きを読む