学問と実践を結ぶことを夢みて

寄稿者:ジャンルカ・ボナンノ(京都大学東南アジア研究所・トリノ大学世界情勢研究所准教授、国際平和と開発機構[IPSO]理事長、ロータリー学友)

私はイタリアと英国の二重国籍を持っていますが、ロータリーとともに歩む旅は、2009年に京都で始まりました。当時、大学院で国際関係の博士号取得を目指していた私は、ありがたいことにロータリー米山記念奨学金をいただき、博士課程での研究を続けることができたのです。

その時はただの奨学金だと思っていましたが、思いがけず、職業的、人間的に大きく成長する機会がもたらされることとなりました。

学問と現場の乖離に気づく

学者の家庭に生まれた私は、子どもの頃、世界中の大学の誰もいない教室でよく遊びました。日頃から身近なところで教育に触れていた私は、幼いときから、いつかは教授として教育に携わることになると思っていました。

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バーチャル社会見学

コロナ禍から育む奉仕

寄稿者:佐藤弥生(2720 Japan O.K. ロータリーEクラブ、社会奉仕委員長)

プロジェクトのきっかけは、当クラブの社会奉仕委員からのメッセージでした。その方は熊本県芦北町で「あしきた・まちのこども園」を運営しているのですが、7月豪雨の被災で子どもたちの当たり前の生活が困難になった、とのことでした。

メッセージには、「子どもたちに会員の仕事を見せることで、将来の夢や希望につなげてもらいたい」との思いが綴られていました。

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共通言語は日本語:多国籍の新世代クラブ

寄稿者:阮 潔(さいたま大空ロータリークラブ会員)

例会がそのまま国際交流に

クラブ会員たち(写真一番右が阮さん)

私たち「さいたま大空ロータリークラブ」は、ロータリー財団の学友と米山記念奨学金の学友から成るクラブです。会員は7つの国と地域の出身で、平均年齢は30代後半、女性が多いのも特徴です。中国に在住し、遠隔で例会に参加している会員もいます。共通言語は日本語です。

一番の醍醐味は、クラブでの例会が、そのまま国際交流であることです。国際色豊かなメンバーと一緒にいる中で、お互いに異国文化や習慣に触れあい、国際理解を深めることができます。

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ロータリー学友参加推進週間に寄せて

寄稿者:吉岡 毅(国際ロータリー第2650地区学友会、ロータリーフェローズ2650)

~ロータリーと再び関わるチャンス

<10月5日からの一週間はロータリーの「学友参加推進週間(Reconnect Week)」です。今回は学友からの寄稿をご紹介します。>

ポリオ根絶を支援する募金活動の様子

15歳からロータリーに参加

私は15歳の時、奈良ロータリークラブが提唱する一条高校インターアクトクラブに友達に誘われて入会しました。このとき初めて「ロータリー」の世界に出会いました。インターアクトクラブでは、学校内の清掃活動や地域で開かれるイベントへの参加を経験しました。

その活動が楽しく、大学の進学とともに、奈良ローターアクトクラブに入会しました。23歳の時にローターアクターとしてロータリー青少年指導者養成プログラム(RYLA)にも参加しました。

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ミャンマー小学校建設で広がる奉仕の輪

寄稿者:安池 勇人(東京東江戸川ロータリークラブ)

「私の夢は、母国ミャンマーの田舎に小学校を建設することです」

すべては、この一言から始まりました。

2019年7月、私たちはミャンマーに3校目となる小学校を建設しました。

1校目完成式③モーさんの夢を叶える
この事業は2年前から継続する国際奉仕活動ですが、きっかけは2016-17年度に私たちが世話クラブとして出会ったミャンマーからの米山記念奨学生モー・トゥザー・チョウさん(以下、モーさん)でした。

彼女の夢を熱く語る姿、そして、米山奨学生として日本で懸命に学び、クラブの例会や奉仕活動に積極的に参加する姿にクラブ会員の誰もが心を動かされ、その夢を一緒に実現できないかと動き出したのでした。 続きを読む

米山奨学生の視点から【5】:日系ブラジル人の誇り

寄稿者:古藤ウィルソン忠志(米山学友、ブラジル出身)

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元・米山奨学生で弁護士の古藤氏(左)

はじめまして。私はブラジル生まれの日系二世、古藤ウイルソン忠志と申します。父は島根県松江市生まれ、母はブラジル生まれの日系二世です。私は19歳のときに日本へ渡り、父の故郷である松江で日本語を勉強し、島根大学農学部で専門的な知識を身につけました。

大学3年のときにロータリアンに出会ってから、日本に対する印象が変わりました。 続きを読む

米山奨学生の底知れぬ可能性にふれて

~ ロータリアンとなった元・米山奨学生から奨学生に潜在する力について学ぶ ~

日本のロータリーが世界に誇る米山記念奨学会にとって、2018年は躍進の年となったのではないでしょうか。昨年の財団設立50周年に続き、2月には米山梅吉氏の生誕150周年行事が盛大に開催。ロータリー会員からの支援を受け、これからも米山の歴史は語り継がれ、未来の平和を担う奨学生が育っていくことでしょう。

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ラシタ・エリヤーワさん

本稿では、ひとりの元米山奨学生をご紹介します。スリランカ出身のラシタ・エリヤーワさん(甲府南ロータリークラブ会員)です。人懐こい笑顔ではきはきと話すラシタさんは、米山支援の意義、ロータリーにとっての米山の価値、そして世界平和にとっての重要性を物語る人です。

2001年、スリランカでの内戦で学業が困難となったため来日。山梨学院大学で経営情報学を学んでいたときに米山奨学金について知り、カウンセラー制度に魅力を感じて申請しました。

しかし、あえなく落選。 続きを読む

米山奨学生の視点から【4】:剣道世界選手権に挑む

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楊 敢峰さん(中国、2004-05米山奨学生、筑波大学大学院に留学、世話クラブ:水戸南ロータリークラブ)

楊 敢峰さんとの一問一刀 !

2018年9月14~16日に世界剣道選手権が開かれます。ほとんどの過去大会で日本が優勝しているものの、最近は諸外国チームからの突き上げがすさまじく、幼いころから竹刀を握って育った日本人選手が苦戦を強いられることも珍しくはなくなりました。とくに今回は、いつも接戦となる相手、韓国の地元での開催。優勝への道のりは今までにも増して険しくなりそうです。

そんな中、「剣道は世界平和につながる」と信じて、中国から参加する元米山奨学生がいます。楊敢峰(ヨウカンホウ)さんです。筑波大学大学院で武道を学び、現在、水の都として知られ、高層ビルも立ち並ぶ蘇州で剣道を教えています。 続きを読む

米山奨学生の視点から【3】:日本の小説との出逢い

5寄稿者: チュオン・トゥイ・ラン
(2006‐07米山奨学生、ベトナム)

お茶の水女子大学大学院に留学
世話クラブ:大宮北東ロータリークラブ

私は、ある日系企業で普通のOLとして働くかたわら、趣味で日本の小説を翻訳しています。翻訳を始めた10年前は、こんなに長く続けられるとは思いませんでした。数えてみると、もう13冊を翻訳しています(2番目の写真)。

初めて日本語で日本の小説を読んだのは、 続きを読む

米山奨学生の視点から【2】:日本のリハビリ医療をアフリカで生かす

寄稿者: アドゥアヨム・アヘゴ・アクエテビ(米山奨学生、トーゴ出身)

私は、最新の義肢装具と福祉機器を研究するため日本に来ました。2013年に新潟医療福祉大学大学院に入学し、2年目に米山奨学生として研究に打ち込み、現在、博士後期課程で三次元動作解析装置*を用いた研究を進めています。Ahego 1
* 関節の動作を細かく記録する装置

下肢の切断、依存、孤立

研究の一環で、アフリカでの義肢装具に関する現状を調査しました。

サハラ以南のアフリカには7,800万人を超える障がい者がいます。しかし、リハビリ施設が不足しています。義足を買おうにも、高価であるため購入は困難となります。 続きを読む

米山奨学生の視点から【1】:矛盾から希望へ そして更なる光へ

寄稿者: 黄セミ(米山奨学生、韓日同時通訳者)1

「武秀」

これだけでは、韓国名なのか、日本名なのか、それとも中国名なのか区別がつかないでしょう。

父、武秀は日本の植民地時代に生まれ、創氏改名政策によって日本名がつけられました。同年代の多くの人がそうであるように、父は日本に対する反感が強かったのです。若い頃は、会社が呼び寄せた日本人から技術を教えてもらうことに耐えられず、独学で日本語を勉強し、技術で彼らを抜いてしまったそうです。また、テレビで日本の話が出るとチャンネルを変えるくらい、父にとって日本は家族や周りの人たちの苦労を思い出させる痛ましい過去のようでした。

そのような父が、 続きを読む

世界に平和の種をまく ― ロータリー米山記念奨学事業 ―

寄稿者:小沢 一彦(米山記念奨学会理事長、2007‐09年度国際ロータリー理事)

私が理事長を拝命している公益財団法人ロータリー米山記念奨学会が、2017年7月、財団設立50周年を迎えました。ロータリー米山記念奨学会は日本のロータリーが協同で運営する奨学財団で、財源はすべて、ロータリー会員を主とする寄付金で成り立っています。Yoneyama2

事業の始まりは1952年、“日本のロータリーの父” 米山梅吉氏の名を人びとの心に刻むため、東京ロータリークラブが奨学金事業の構想を立てたことにさかのぼります。日本で学ぶ外国人留学生への支援と交流を通じて「平和日本」続きを読む