素人にチャリティ開催は無理なのか? 日本のアクトが導いた答え

寄稿者:柿本知樹(名古屋熱田ローターアクトクラブ、Walk in Blue実行委員長)

ローターアクトに参加してから、ずっと考えてきたことがあります。

「いつか自らの手で企画をして社会の役に立つ活動をしたい」

2019年に入会してから、実に4年という歳月を経て、ようやくその願いが実現できました。そうして生まれた企画が、ファンドレイジング型チャリティ「Walk in Blue」です。

ただ、その実現までには長い道のりがありました。

<海外のチャリティに出会い、衝撃>

私が名古屋熱田ローターアクトクラブに入会したのは2019年7月のことです。ちょうど、その年の11月22~24日に上海での海外研修がありました。これがその後の転機となるのですが、私はこの研修へ参加できたことに運命を感じています。

それというのも、コロナ禍になる直前の抜群なタイミングでの渡航でした。年明け以降なら飛行機は飛ばなかったかもしれません。登録期限が入会の翌月だったこともあり、もう少し入会が遅かったら私は上海へ行くことができなかったのです。

そのようにして参加できた上海での研修は、私たちに大きな衝撃を与えました。その最たるものが、上海ローターアクトクラブが主催しているチャリティマラソン「RUN IN BLUE」です。これは、青いシャツを着て走るというチャリティイベントで、参加費として集まった費用は支援金として用いられます。上海ローターアクトクラブでは子どもへの支援を行っていました。

一つのローターアクトクラブが大規模な社会奉仕事業を開催することに驚きを持ったと同時に、人や社会の役に立ちたいという強い想いが感じられるイベントでした。日本から参加したメンバー全てが胸を打たれたはずです。

<海外のチャリティを日本へ輸入>

上海の研修へ参加したメンバーの一人が、このRUN IN BLUEに深い感銘を受けて、日本への輸入を決意します。

国際ロータリー第2760地区ローターアクトによる主催で、2021年11月23日に愛知県豊田市でRUN IN BLUE JAPANを開催しました。これにより集まった支援金67万円は、発達障がいのある子どもを支援している豊田市子ども発達センター「ひまわり」へ寄付されました。

実際に、参加した方から「身体を動かして、健康にも良くて、支援ができるなんて素敵です。来年も参加したい」との感想をいただきました。嬉しくて有難いお言葉で、やってよかったと実感しました。

しかしながら、このRUN IN BLUEは毎年開催していくには高いハードルがあり、課題を残す結果になったのです。

<課題を乗り越え、リメイクへ>

その課題というのは大きく分けて二つあります。

一つは運営面での負担です。開催前に公園の管理団体にご挨拶へ行った際、次のことを言われました。

「素人がマラソンを企画するなんて無理ですよ」

その時はただただ、えっ!?という気持ちしかなかったのですが、実際にやってみたところ、許可申請が煩雑であったり、ルートの途中途中でスタッフが立って誘導が必要であったり、必要スタッフ数も膨大で、走るペースはみなさんもちろんバラバラ。てんやわんやでありました。

二つ目は、「取り組みは凄く素敵だと思いますが、走ることはできない」という声が非常に多かったことです。せっかく気持ちがあるのに参加できないことは残念なことです。

このような課題もあり、第2760地区ローターアクトは2回目の開催を断念。しかし、せっかく日本へ輸入したわけですし、このチャリティは次世代へと継承していきたいという気持ちが私にはありました。

運営負担を最小限にし、老若男女誰でも参加できるかたちでモデル構築ができないかと私は頭を悩ませました。そして、答えが浮かび上がったのです。

「そうだ、歩けばいいじゃないか!」

歩くようにすれば、みなさん同じペースです。その中に誘導スタッフがいれば、スタッフも一緒に参加できる上に、途中の案内人も必要ありません。走るのと違って、歩く場合は必要な許可も簡単です。歩くだけなら走るよりも参加できる人はずっと増えるはずです。

そういう経緯で、チャリティのリメイクを考案し、企画へと移していきました。この企画は、名古屋熱田ローターアクトクラブの単独主催として、夢の実現へと向かって動き出します。

<持続可能な開催モデルの構築>

Walk in Blueの企画にあたって、私が特に意識したのは、ずっと続く取り組みにするということです。

その上で気を付けたポイントが3点あります。

1. 開催費用を全額、資金調達すること:これまで名古屋熱田ローターアクトクラブの事業は、スポンサークラブの支援に依存してきました。そこから脱却し、ファンドレイジングでの資金調達を決意します。

2. 必要経費を最小限にすること:今回のWalk in Blueでかかった費用のほとんどは、青シャツ100枚と記念誌100部の印刷費で全体の80%ほどを占めます。必要経費をコンパクトにすることは、資金調達のハードルを下げることにも繋がります。

3. 寄付金は開催費用以上にすること:寄付金が開催費を下回れば、開催費を全額支援した方が有意義だと感じます。今回は開催費の128%にあたる231,000円の支援に成功しました。

さらに、ここから持続可能な取り組みにしていくための「仕掛け」を用意しました。それは、集まった参加費の70%を寄付金とし、残った30%を次回の開催費へ回すということです。今回は参加費33万円が集まりましたので、次回には99,000円の予算が手元にある状態で始まります。70%としたのは、開催費の100%を上回る確実なラインだと判断したことからです。これを順繰りすることで、補助金に頼らない半永久的に実行可能な社会奉仕事業モデルが構築できます。

<ファンドレイジングの実施>

さて、資金調達をするにあたって利用したのはクラウドファンディングでした。

これで当初は全額開催費用を調達しようと考えました。しかしながら、なかなか調達は伸び悩み、結果的に開催予算の半分ほどしか集まりませんでした。実行に移せないかもしれないという現実と向き合い、数日間はちゃんと眠れなかったです。とにかく何かアイディアは無いかと必死に考え、出した答えは資料を持ってスポンサーになりうる方へプレゼンテーションしに行くことです。資料と想いを掲げて挑戦したところ、無事に開催できる金額が集まりました。集まった瞬間は15分ほど、呆然と立ち尽くしたのを覚えています。

<支援にかける想い>

寄付金交付式

私は日頃からNPO活動に趣味で携わっていて、それもあって支援に対して想いがあります。地元地域で人や社会のために熱心に頑張っている方々を知っています。受理した寄付額の範囲でやりくりして、大きくない金額であったとしても、できることはたくさんあると信じて努力しているNPOを私は見てきました。

そこで、選んだ支援先というのは、名古屋市で長年環境保全に取り組んでこられたNPO法人「藤前干潟を守る会」です。名古屋熱田ローターアクトクラブもこれまで環境活動に熱心に取り組んできたこともあって、シンパシーを感じました。同会の理事長は、驚くことに30年環境保全に取り組まれてきた方でした。支援金は子どもたちへの環境啓発活動に充て、干潟を守っていく継承者を育てるために使用されると聞きました。そのような素晴らしい活動に寄付できたこと本当に嬉しく思います。

<地域団体と繋がるクラブ>

このようにして、名古屋熱田ローターアクトクラブはNPO法人「藤前干潟を守る会」と関係を持つことができました。寄付金を届けることができたことに加えて、活動先として私たちはボランティア参加することも可能です。年に2度ほど大規模な清掃活動をしておられるそうなので、来年度は干潟の清掃活動へ参加します。

Walk in Blueは来年度の開催が既に決定しています。支援先の団体については毎回変わります。将来的には名古屋熱田ローターアクトクラブと繋がる地域団体が増えていき、社会がより良くなることが私の願いです。

普遍的な価値を社会へ提供できるクラブをこれからも目指していきます。

【関連情報】
>> 名古屋熱田ローターアクトクラブのホームページ
>> 国際ロータリー第2760地区 クラブ事業報告
>> 国際ロータリー第2760地区 マスコミ掲載情報
>> 東海テレビの記事

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