寄稿者:関 博子(東京米山友愛ロータリークラブ会員)
「核廃絶と平和構築」をテーマとする模擬国連を開催
10月22日、南カリフォルニアのPalos Verdes Peninsula 高校で開催された「ロータリー模擬国連会議(ROTARY MODEL UN Peace Conference)」 に参加してきました。これは、ロス在住の中曽根牧子ガバナーエレクトの協力で実現した高校生対象のプログラム「南カリフォルニアにおける青少年に対する平和教育活動」の一環であり、ロータリー財団のグローバル補助金を活用しています。同校で日本語を教える岩見幸子先生(元ロータリー財団奨学生)の協力もあり、日米ロータリークラブ、地元高校、Model UN(模擬国連)を推進する団体Best Delegateが連携して開催できました。目的は、高校生に平和について考えてもらいながら、将来のリーダーを養成することです。
南カリフォルニアという土地は、日系人も多く、多様な人種が共存する地域です。いじめ、ヘイトクライム、戦争が起きている状況の中で、子どもたちが命の尊さを学び、生きていく勇気を与えたいという思いもありました。
模擬国連では、高校生が各国代表に扮し、「核廃絶と平和構築」をテーマに国連委員会を再現します。譲歩することを学び、合意点を見つけて紛争を予防し、平和を維持するために必要なことを学びます。
模擬国連に先立ち、高校生たちは教科担任が主導するさまざまなプログラムに参加しました。平和に関する図書で歴史や異なる観点を学び、全米日系人博物館の見学、被爆者や日系人強制収容の体験者の話を聞くといった活動を経て、その集大成となる模擬国連に臨みました。
メインスピーカーは、米国人として初の広島平和文化センター理事長であるスティーブン・ロイド・リーパー氏でした。リーパー氏は、平和市長会議米国代表を務めた経験があり、核兵器廃絶を訴える平和活動家として被爆者の思いや体験談を伝える活動を行っています。
リーパー氏は、開会式で高校生たちに次のように語りました。「原爆投下時とは比べものにならないくらいの破壊力をもつ現代の核兵器は、今や日本だけでなく、世界人類への脅威となっています。被爆者たちの願いは、皆が手を取り、自分たちと同じ辛い体験をすることが決して起きないよう平和な世界を築くことです。そのために今日ここにいる皆がその重要な役割を担うのです」
これまで多くの被爆者の思いに耳を傾け、通訳してきたリーパー氏だからこそ発せられる重みのある言葉を、高校生やアメリカ人の方々は一生懸命聞いていました。
当日配布されたプログラムをこちらからダウンロードできます(日本のロータリアンで被爆者である川妻二郎氏の体験記とその各国語訳が含まれています)。
広がる平和活動の輪
模擬国連に加えて今回、この高校で被爆樹木イチョウの植樹を行いました。校門前の大通りに面した場所が選ばれ、植樹式には生徒たちのほか、校長先生、地区ガバナー、カリフォルニア州議会議員アル・ムラツチ氏にも同席いただきました。私は日本代表として、平和の象徴である折り鶴の話を交えて挨拶しました。同行した中前緑さん(東京米山E2750ロータリークラブ)が現地での通訳を担当してくれました。高校だけでなく地元に愛される樹として健やかに成長することを願っています。
同時企画として図書館で開かれた講演会では、ロス在住の広島被爆者ハワード・カキタ氏、ロシア侵攻後にウクライナから避難してきたご夫婦、アフガニスタン出身の移住者などさまざまな背景をもつスピーカーが、模擬国連に出席しなかった生徒や保護者、地元市民に語りかけました。高校の学習課題の一つにも含まれていたため、生徒たちはレポート用にたくさんメモを取っていました。進行役を務めた同校出身のジョン・カプランさん(Palos Verdes Sunsetロータリークラブ)は、「世界を変えられるのはほかでもない私たち市民。だからこそ私はロータリーで活動している」と述べました。
戦争で敵国であった日米がこのような合同プロジェクトで協力するのは、とても意義深いことだと思います。多国籍の会員が在籍する東京米山友愛ロータリークラブと東京米山ロータリーEクラブ2750など、日米の9クラブがつながったことで実現できた活動です。
若者の心に種火をつける
閉会式で行われた表彰では、さまざまな人種の高校生が平和について意見を述べ 自分たちの活動を友人とともに笑顔で称え合いました。
参加したある生徒は次のような感想を寄せてくれました。「ロータリー平和会議への参加は、私にとって一生に一度の経験でした。 この地球が直面し続けている問題について学べただけでなく、多くの人が集まってこのような素晴らしいイベントを作り上げているのを見るのはとても刺激的でした。被爆樹木の植樹も見学し、これが国際的な取り組みであることを目にして、将来に私たちが達成できることについて大きな希望を抱くようになりました。過去、現在、未来について多くのことを学びました。この思い出をずっと大切にしていきます」
私はロータリアンとなって25年ですが、このような若者たちの心に触れる瞬間に一番喜びを感じます。若者にしっかりと種火がつき、平和について考えてもらうという目的を果たせたと思います。
私たちは、小さな声でも大きな力になると信じて、平和の尊さをずっと語り続けなくてはなりません。ロータリーはそのような人たちの集まりだと思います。世界に向けて発信しつづける使命をもって。Peace begins with you! ~平和はあなたからはじまる(田中作次元RI会長年度のロータリー世界平和フォーラムのテーマ)

【寄稿者プロフィール】
関 博子(せき ひろこ)
1997年にロータリー入会。2010年、多国籍の米山学友を中心としたロータリークラブを設立するため東京米山友愛ロータリークラブを結成し、特別代表となる。2012年、日本を離れ活動する米山学友たちをオンラインでつないだ東京米山ロータリーEクラブ2750を結成し、特別代表を務める。Heiwa: Rotary Hiroshima Survivor Trees 日本リーダーとして、日米専門家たちの協力のもと被爆樹木の植樹を通じた平和教育支援活動を続けている。茶道家(表千家教授)。趣味は長唄三味線。外国人留学生への支援を目的とする一般社団法人 国際人財支援協会の創立者・代表理事。ロータリーカード地域コーディネーター。
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