『Rotary』誌で紹介された日本人選手の活躍

今月、野球の本場アメリカで活躍するエンゼルスの大谷翔平選手が、ベーブルース以来の104年ぶりとなる同シーズン「2桁勝利、2桁本塁打」を成し遂げ、この快挙に日本中が沸き返えりました。それとタイミングを合わせるかのように、ロータリーの英文機関誌『Rotary』誌の8月号に、大谷選手の活躍に言及した記事が掲載されています。千葉ロッテマリーンズの佐々木朗希選手も紹介しており、野球ファンの日本のロータリーファミリーには嬉しい内容となっています。
今回は、この記事の抜粋を日本語で皆さまにお届けします。今や各国からプレーヤーが集まる米国野球界の歴史や選手の多様性についても触れており、日本の方々にも興味深くお読みいただけるでしょう。
*********************************
世界が見ている
記事:Scott Simon
(『Rotary』誌8月号より抜粋・編集・翻訳)
1903年、米国野球のナショナルリーグとアメリカンリーグの初対決が、やや非常識とも言える名の下で行われました。その名も「ワールドチャンピオンシップゲーム」(後の「ワールドシリーズ」)。当時、セントルイスから南と西に拠点を置くチームがなかったことを考えれば、このシリーズは世界どころか、アメリカ全土さえも含んでいませんでした。
しかし、今や野球は世界的スポーツ。NBA(全米プロバスケットボール協会)やNHL(全米ホッケーリーグ)などのプロスポーツ団体にも外国人選手はいますが、メジャーリーグ野球(MLB)には独特さがあります。それは、世界中にファンやフォロワーがいることです。
MLBの放送は75年前にニューヨーク市で始まりました。1947年4月15日、黒人選手ジャッキー・ロビンソンがブルックリン・ドジャースのユニフォームを着てエベッツ・フィールド球場に登場したとき、「MLBでプレーするのは白人だけ」という暗黙のバリアを打ち破りました。
2022年となった今では、あの歴史的瞬間がいかに重要であったかを真に理解するのは難しいかもしれません。
ジャッキー・ロビンソンが初めてMLBでプレーした当時、米国のほぼすべての町で人種隔離による差別が行われていました。ノルマンディーに上陸した勇敢な部隊も人種で分けられていましたし、奴隷解放宣言と独立宣言(そしてそこに書かれた「すべての人間は生まれながらにして平等である」という一文)について学ぶアメリカの生徒たちの授業の多くが人種隔離教育の下で行われていました。
国民的娯楽である野球についても同じで、当時、アメリカンリーグとナショナルリーグでプレーできるのは白人選手のみ。「メジャーリーグ」と呼びつつ、サチェル・ペイジやジョシュ・ギブソンといった多くの偉大な黒人選手は排除してニグロリーグ(黒人リーグ)に制限していました。今日、こうした偉大な黒人選手の一部は殿堂入りし、遅ればせながらささやかな報いを(その多くは没後に)受けています。
ジャッキー・ロビンソンが初めてMLBでプレーしたのは、大統領令によって米軍での人種差別が撤廃された1年前、米国最高裁が学校での人種隔離教育を無効にした7年前のことでした。いずれももっと早く行われるべきでしたが、MLBが歴史の流れを作ったともいえるでしょう。

選手の人種や国籍の多様性が、野球の世界的なファンの拡大につながったことは確かですが、そのほかにも要因があります。野球の魅力の一つは、誰でも共感できることです。バスケットボール選手のような2メートルの身長も、アメフト選手のような170Kgの体格も必要ありません。偉大な野球プレーヤーはしばしば、普通の人と同じサイズの服と靴を着用しています。
人生のように、野球シーズンも長い道のりです。3月から10月は、アメリカでも日本でも、野球は生活のバックグラウンドの一部となります。毎日のニュースでは、天気予報や交通情報に加えて、野球の試合結果が流れます。ドラマのシーズンのように、回が進むにつれてクライマックスへと近づいていきます。
この記事を書いている2022年シーズンの最も輝かしいスターといえば、大谷翔平選手でしょう。才能にあふれた日本出身のこのスター選手は、ロサンゼルス・エンゼルスでプレーしています。昨年には二刀流でオールスターに出場し、「投手は打てない」という野球界の常識(少なくとも慣習)を完全にくつがえしました。「ショータイム」と呼ばれる大谷選手は、投手と野手の両方を見事にこなします。現在のもう一人の偉大な選手に、日本の千葉ロッテマリーンズでプレーする佐々木朗希選手がいます。この4月、佐々木選手は連続17イニング無安打、無得点、無四球という偉業を成し遂げ、その完璧さで野球界をうならせました。
そのほかにも、MLBのマイク・トラウト、フェルナンド・タティス・ジュニアといった優れた選手がいます。太平洋を挟んで活躍するこれらの偉大な選手たちは、1世紀以上を経た今も記録を打ち破り、前例をくつがえし、試合に新鮮さをもたらす新しい方法があることを教えてくれます。
【著者プロフィール】
スコット・サイモン(Scott Simon)
米国公共ラジオ放送番組の司会や『Jackie Robinson and the Integration of Baseball, Home and Away, and My Clubs: A Love Story』の著書で知られる。
【最近の記事】
>> 日本留学で出会った被爆者との再会
>> 定年後の人生をポリオ根絶に捧げる
>> 貧しくても奉仕:アフリカの人びとから学ぶ