寄稿者:村田 雅明(京都南ロータリークラブ会員、「令和の寺子屋」プロジェクト担当理事)

「答えのない問題に対して、自分の頭で考え、自ら行動して正解を作り上げていく人材を育成しよう、そのために、各界で活躍する3人のカリスマを集め、子どもたちの人生を変えるようなインパクトのある“授業”を行おう」
私たち京都南ロータリークラブは、「日本の未来を創る」を合言葉に、“令和の寺子屋”プロジェクトを立ち上げました。ユネスコが進める「世界寺子屋運動」に触発された当クラブが、答えのある問題を正確に解ける能力を養う公教育とは別に、子どもたちに刺激を与えることを目的にしたものです。
対象は、京都市教育委員会の「ジュニア京都文化観光大使」に任命された小学生と、地元の醍醐小学校の公募で選ばれた5~6年生の計24人。2021年11月20~21日、世界文化遺産である醍醐寺(京都)で2日間の合宿形式で実施されました。
また、この企画に賛同したNHKがすべてを収録し、番組化もされました。
一流の先生たちを迎えて
生物学者の福岡伸一先生による授業は、弁天池での生き物探しや顕微鏡を使っての「生命」の循環から始まり、「動的平衡」という考えを用いて、「死」を利他的とするエントロピーの法則を紹介するなど、 子どもたちの興味関心を思う存分に引き出していただきました。

演出家の宮本亞門先生を迎えた授業のテーマは「エンパシーを体感する」、つまり、相手の立場になって理解しようとすること、それに必要な想像力をつけることでした。事前にオリジナル台本をもらい、子どもたちが演じられるように用意するという宿題も出され、演出家らしい授業になると楽しみにしていました。
お話の中で印象深かったのは、有名な童話(桃太郎)を通して「エンパシー」を考えるというもの。一般的な桃太郎を読んでみると、おかしいと思うことはないだろうか?鬼の立場は? 本当に桃太郎は正しいの? 鬼にも事情があったのでは? どんどん子どもたちが引き込まれていき、そして鬼の立場になって考えてきてほしいと宿題を出されて、子どもたちが家に帰って家族と一緒に考える機会ができました。

二日目には鬼の立場になる「エンパシー」の発表。鬼は悪くなかったのではないか、など、それぞれの立場になって考えて初めて見えてくることも多いことを学びました。芝居や童話をとおして、相手の立場になって物事を考えたり、現代の社会やさまざまな世界環境のいろいろな人たちの立場を想像して意見を述べあったりしながら、相手を理解する大切な試みだったと思います。
世界的に有名な演出家の前での芝居に、子どもたちは緊張感の中にも活き活きとして、その表情は輝いていました。今回の童話を通して、当り前だと思っていたことも違う視点で見ることを知り、今まで以上に明るく晴れ晴れとした優しい表情に変わっていたのが印象的でした。
俳優・タレントの本上まなみ先生の授業では、「私の好きな京都」を題材にトークセッションが行われました。実際に京都に移り住んだ本上まなみ先生のお話と、子どもたちが事前に宿題として用意した写真やイラスト付きの紹介文を基に、活発なトークが繰り広げられました。

2日間を通し、子どもたちが終始、積極的に手を挙げて意見を述べる姿に圧倒されました
昼食も、京都南ロータリークラブの会員である京都を代表する料理人ら8人の指導の下、地元の食材を使って子どもたち自身で作りました。ただ食べるための料理ではなく、“食も大切な学びの場”と考え、ありあわせの料理をそこにある材料を考えておいしくする食の素晴らしさを伝えることが目的でした。調理を通じて、おいしい料理とは何か、命の大切さなどを一緒に考えました。
この食育の「授業」については、素晴らしい内容にNHKの方も驚かれ、醍醐寺の僧侶の方にお膳を運んでもらうという演出までこだわりました。

プロジェクトの企画とNHK放映
今回のプロジェクトを立ち上げる際、「子どもたちの未来に何か形を残せるような奉仕事業を」との当クラブの橋本和良会長の要望があり、また、高橋拓児副会長が料理人でNHKとの結びつきもあったことで、「令和の寺小屋」プロジェクトの趣旨を説明してNHKに賛同していただきました。1年以上前から高橋副会長、職業奉仕委員会の田中久喜委員長、そして私の3人で打合せを重ねました。カリスマ講師の選定は、こちらの要望を基にNHK制作会社が調整を行ってくれました。コロナ禍でのスケジュール調整と2日間の拘束が必要なので、実はなかなか難航しましたが、3人の先生に出ていただけることになりました。
世界文化遺産である醍醐寺で行えたのは、当クラブ会員である醍醐寺の仲田順英さんのお力添えの賜物でした。醍醐寺の重要文化財の三宝院で授業を行うことは普通では考えられないことで、NHKの方も最初は信用してくれなかったほどです。
その道を究めた多種多様な一騎当千の強者の集まりである京都南ロータリークラブならでは、「天の時 地の利 人の和」すべてに恵まれたからこそできた奉仕事業だったと、クラブ会長からも感想をいただきました。関係各位の皆さまには感謝しかありません。
世界は複雑で、予測不能な出来事が頻発し、知識だけに重きを置いた教育では生き抜けない時代となりつつあります。今回の事業は、子どもたちが自らの頭で考え、答えを導き出すための教育の一例になったのではないかと思います。
NHKが素晴らしい内容の番組に編集してくれ、2022年1月23日(日)と30日(日)の二日にわたり、45分×2日の計90分が放送されました。
☆冊子作成しました。ご覧ください:https://rcks.gr.jp/pdf/reiwanoterakoya.pdf

【関連記事】
>> 「つながる」要は19の同好会。
【最近の記事】
>> キエフを逃れたウクライナ人会員からのレポート
>> 倫理的ジレンマ:あなたならどうする?(例会場でのパワハラ)
>> 彼は砂糖を入れますか?障がい者のインクルージョン
NHKの再放送を観ました。
宮本亜門さん、福岡伸一さん、本庄まなみさんの講義や進行も素晴らしく、何よりも参加する子供たちが生き生きとしていて、観終わって涙が出ました。
また、当方57歳のおっさんですが、初めて知ることや気付きも多く、本当にためになりました。
素晴らしい授業に出会わせていただき、お礼を申し上げます。
いいねいいね
お送りしたコメントの「本庄まなみさん」は「本上まなみさん」でした。
すみません。
いいねいいね