
回答者:日本のロータリーコーディネーター
今回の「倫理的ジレンマ」では、近年ニュースで取り上げられることが増えた「パワーハラスメント」への対応について検討します。次のシナリオについて、日本の3名のロータリーコーディネーター(RC)にご意見をお伺いしました。
あるクラブは、長年、同じレストランで例会を開いてきました。クラブ会員はこの会場を気に入っており、場所も便利だと言っています。しかし最近、レストランのスタッフ数名が辞職し、経営者(ロータリー会員ではない)が深刻なパワーハラスメントを行ったことで、パワハラ防止法に基づく勧告を受けたことが明らかになりました。 クラブには直接の関係がないことですが、近年の「パワハラ」への関心・認識の向上と相まって、レストランに対する批判が地域社会で厳しくなっています。レストランとクラブの関係は良好ですが、一部の会員は新しい例会場を検討すべきだと感じています。こんなとき、あなたがクラブリーダーならどうしますか? |
第1地域・ロータリーコーディネーター
第2520地区パストガバナー
仙台泉ロータリークラブ
菅原 裕典
私がクラブのリーダーなら原則、クラブの例会場は変えません。レストランがこのままの状況であれば、経営者・運営スタッフと話す機会を設け、レストランの雇用形態や働く環境を改善することに努めていただきます。このままであれば、確実にレストランのブランドはマイナスであり地域への印象も悪いからです。
私たちは「多様性・公平さ・インクルージョン」(DEI)を受容し、ロータリー内だけではなくロータリーファミリーにも行動で示すべきであると信じており、レストランの経営者、運営スタッフにもそれをお伝えし、レストランの企業価値向上のために一緒に考えていきます。多様性、公平さ、インクルージョンや時代背景を理解することができれば、経営者、働くスタッフも変わり、レストランのブランド力アップにつながるはずです。またそれは、地域社会にとっても重要だと思います。DEIの精神は全てに通じ、またこのレストランもロータリーファミリーの一員だと私は思います。
第2地域・ロータリーコーディネーター
第2750地区パストガバナー
東京飛火野ロータリークラブ
水野 功
① 各クラブは言うまでもなく地域に密着した存在です。
② 各クラブ会員は、その地域のリーダー的存在であるべき、またそうなるべきです。
③ 会員は、各地域においてリーダーシップを取れるような存在であるべきかと考えます。以前は、1業種1名という原則で各職業を代表する方々の集まりでした。職業分類が事実上なくなった現在も根底にはこの考えがあると思います。
このような考えから、例会場であるレストランのパワハラ問題はクラブにとって大きな問題であると思います。会長としては、クラブ会員とクラブ協議会などで全員で話し合うべきと考えます。ロータリーの中核的価値観、DEIなどの観点から議論すべきと考えます。また、レストラン経営者とも率直に話し合うべきであるとも思います。継続したいが、継続できる状況を醸成していただくこと、特に四つのテストを経営に取り入れるよう説得してみることも大事かと思います。それこそ「インクルージョン」かと思います。
第3地域・ロータリーコーディネーター
第2680地区パストガバナー
神戸須磨ロータリークラブ
滝澤 功治
私は例会場を変える、すなわち新しい例会場を探すべきだと考えます。
確かに交通の利便がよく、素晴らしい食事を出してくれるので、会員が支持してきたのでしょう。しかし、その経営者がパワーハラスメントを行ったこと、そしてその事実はパワハラ防止法に基づく勧告を受けたことで明らかというのであれば、もはやそのレストランはロータリークラブの例会場としてはふさわしくありません。ロータリーはDEIを理念として掲げていますが、すべての参加者が心地よい時間を過ごすことができるように努めることは当然のことです。私たちロータリーはハラスメントのない環境を享受できるように、自らもそして第三者に対しても保証していく責務があると思います。
以上のような私の考え方をクラブ理事会に伝え、賛成してもらうように働きかけます。このまま放置していては、ロータリーはパワーハラスメントに無関心な組織だと思われかねません。
似たような状況が皆さんのクラブでも生じた場合、どのように対応しますか。また、対応するための危機管理体制は整っていますか。ぜひクラブでもご検討ください。
日本の地域リーダーにご回答いただいた、ほかの倫理的ジレンマもご覧ください。
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>> 資金の使い道(2018-19年度RRFC)
>> クラブへの影響(2016-17年度RPIC)
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