「真実かどうか」

寄稿者:ジェレミー・オッパーマン(Newlandsロータリークラブ会員[南アフリカ]、ロータリーDEIタスクフォースメンバー

「大主教さん(The Arch)」の愛称で親しまれているノーベル平和賞受賞者、デズモンド・ツツ名誉大主教(※)の誕生日イベントを見ていた私は、国際的に尊敬されているリーダーたちからのメッセージを聞いて驚きました。それらはいずれも、感情的で大げさなお決まりの賛辞ではなかったからです。

南アフリカの大学教授であるトゥリ・マドンセラ氏、二人の元大統領(南アのマンデラ元大統領、モザンビークのマシェル元大統領)の未亡人であるグラサ・マシェル氏、アイルランド元大統領で国連特別顧問(環境)のメアリー・ロビンソン氏は、ツツ大主教への心のこもった短いメッセージを述べた後、すぐに「真実」について語り始めました。

腐敗、犯罪、気候変動、貧困……。その日の議題は、こうした世界的な問題でした。気取った言葉や外交的な美辞麗句はなく、ただ厳然たる事実が包み隠さず語られました。

これに驚いた人や落胆した人もいたでしょう。伝説的な存在ともいえるこれら3人の女性、そしてツツ大主教の親友であるダライ・ラマといった華々しい顔ぶれとともに、ツツ大主教の魅惑的な人生が大々的に紹介されると多くの人が期待していたでしょう。

しかし私は、素晴らしいと思いました。

真実を語る、と聞いて思い出すのは、最近、ある組織のハイレベルな戦略会議に出席していたときのことです。自分たちの過去の過ちを強調したり、組織の過去の欠点を認めたりすることは、賢明または適切か?会議出席者の中には、これに賛同せず、過去は重視せずにこれから良き慣習を築いていくことを強調すればよいと考える人もいました。その会議の主題は「多様性、公平さ、インクルージョン(DEI)」でした。

多様性とインクルージョンという点で変化をもたらしたいなら、これまでの欠点を隠さずに認めることは不可欠であると、私は断固として主張しました。その理由を尋ねられた私は、道を尋ねるときのたとえ話を用いました。

道を尋ねると、人びとはすぐにこう返してきます。「どちらから来たのですか?」

不慣れなところで前進したいと思うとき、過去にとらわれることを不快に思うのはよくあることです。問題なのは、ほとんど場合、現状をつくり出した原因は何か、ということへの認識の欠如です。この欠如は、まったくの無知による場合と、意図的な無視による場合があります。

過去を直視することで、衝撃的な事実と向き合い、変化が何よりも重要だという気づきにいたります。なぜなら、現状維持という選択肢は絶対に受け入れられないからです。

非常に多くの組織や社会でDEIの取り組みが遅々として進まないのは、意図的であるかどうかを問わず、このような無知に起因しているのは確かです。変化を確実に進める方法を見極めるには、まず事実と現実を受け入れることが不可欠です。

だからこそ私は、多様性の実践者としての仕事を通じて、神話を取り除き、事実と現状を示すことに多くの時間を費やしています。南アフリカで障がいのある子どもの65%が学校に通っていないこと、国内にわずか400の特別支援学校しかなく、そのうち小学6年まで通える学校は70%未満であること、障がい者のうち雇用されているのは1%に満たないこと、公共交通機関のバリアフリーがほとんどないこと、盲目などが理由で印刷物を読むのが困難な人のための本やメディアが世界で6%にも満たないこと。これらはいずれも、私が伝えようとしている現実です。

そうするのは、哀れみを乞うためではありません。真実を伝えるのは、人びとを目覚めさせ、変化を促すためです。マドンセラ氏、マシェル氏、ロビンソン氏が、貧困、腐敗、気候変動における変化のための行動を呼びかけたように。

何ごとでも真実である限り、私はそれを語ることに心から賛同します。

(※デズモンド・ツツ名誉大主教:南アフリカのアパルトヘイト政策に反対し、非暴力の撤廃運動を行ったことでノーベル平和賞を受賞。ロータリーのポリオ根絶大使として「あと少し」キャンペーンに参加。昨年12月26日に死去。)

本稿は『Rotary Africa | south』に掲載された記事を編集・翻訳したものです。

【プロフィール】
ジェレミー・オッパーマン(Jeremy Opperman)
2020年にNewlandsロータリークラブ(南アフリカ、ケープタウン)に入会。網膜色素変性症(障がいが徐々に進行して全盲にいたる先天性疾患)を患い、組織における障がい者雇用、ユニバーサルアクセスのためのビジネスケースの作成、障がい者のインクルージョンへの戦略的アプローチといったトピックについて幅広く講演、執筆、コンサルティングを行う。 詳しい略歴はこちら

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