「多様性・公平さ・インクルージョン(DEI)」シリーズ第8回

2020年9月、ロータリーは組織内における多様性・公平さ・インクルージョン(DEI)の現状を評価し、ロータリー全体でDEIの価値と実践を推進するための包括的な行動計画を作成することを目的に、DEIタスクフォースを設置しました。一連のブログ記事で、タスクフォースの取り組みと「多様性・公平さ・インクルージョン(包摂)」の重要性について、メンバーの方々に伺っていきます。第四弾となる今回は、ジェレミー・オッパーマンさんにインタビューします。
Q:ご自身も障がい者であることは、障がい者問題についての考え方にどのように影響したと思いますか。
オッパーマン:私は、自分が盲目だから多様性や障がい者の公平さを推進するスペシャリストになったわけではありません。その前に10年以上、満足できるキャリアに就いていましたから。ただし、盲目であることによって、この主題について真実味をもって話せるという利点はあります。障がいを身をもって体験し理解している私は、十分な理解と共感をもってこの問題を扱うことができます。
Q:人事マーケティングコンサルティング会社を立ち上げ、多様性と障がい者の分野、特にノーマライゼーションに力を注いでおられますね。誰もがロータリーでインクルーシブな体験ができるようにする取り組みが行われている中で、さまざまなレベルのリーダーに何を伝えたいですか。
オッパーマン:クライアントから多くのことを学びましたが、NGOであれ、政府や企業であれ、いくつかのパターンがあることにすぐに気づきました。同じ過ちを犯さないためにも、そこで得た教訓をロータリーのような団体も理解することが大切です。障がいと多様性について企業が苦労する理由の一つに、リーダーへの投資不足があります。リーダーが多様性、特に障がい者について知識を身につけられるよう投資することが極めて重要です。というのも、これは非常に微妙かつ複雑な問題だからです。障がい者の公平について興味深いのは、誰もがこれに共感できるという点です。障がいとは誰にでも起こり得ることですから。
もう一つの教訓は、多様性の分野においては組織が頻繁に対応しているものの、場当たり的だったり、後手に回っていたりすることです。あちこちで断片的に対応するという過ちを犯さないことが大切です。縦割り構造のため、部門内だけで対応し、他部門との連携が図られていないこともあります。ロータリーのように多部門にわたる組織では、全部門の統合を図ることが非常に重要です。これは戦略にかかわることであり、各部門でばらばらに行うことではありません。
Q:アクセシビリティの「表面的な理解」(車いすでのアクセスなど)と、障がい者の公平も含む「完全な理解」の違いについて執筆されていますね。誰もが快適で、等しく参加できる環境をつくるにあたり、一般の人びと、また特にロータリアンが見過ごしやすいバリアにはどのようなものがあるでしょうか。
オッパーマン:ノーマライゼーションによるインクルージョンを阻む大きな要因として、「態度のバリア」があります。これは、何世代にもわたって「排除」の考え方が持ち続けられてきたからで、何千年間も女性の地位向上を阻んできたパラダイムもこれと同じです。そのような時代は終わりつつありますが、こういったことはなくすのが難しいのです。
私から伝えたいもう一つのことは、物理的なバリアは自然に作られたものではない、ということです。アクセシブルではない建物は自然にできたものではなく、人間が作ったものです。人びとが障がい者のインクルージョンについてもっと考えていれば、建物でも何でももっとアクセシブルになるはずです。これこそ、私が「態度のバリア」と呼んだことです。物理的なバリアを乗り越えるには、態度のバリアを乗り越える必要があります。これが最大の課題です。
また、デジタルアクセシビリティの問題についても認識することが不可欠です。これは、全盲の人だけでなく、視力障害のある人や失読症の人、またはデジタルインターフェイス自体が使えないという高齢者にも影響します。デジタルスペース、インターネット、インフラなどをもっとアクセシブルにしなければなりません。組織として、確固たる姿勢でこれに取り組んでいく必要があります。
Q:あらゆる言動において障がい者の公平さを優先することが、なぜすべての人にメリットとなるのですか。
オッパーマン:「排除」よりも「インクルージョン(包摂)」のほうが理にかなっているからです。分類によって人びとを排除すれば、たとえそれが無意識であっても、一人ではなく複数の人を排除することになります。例えば、レストランを思い浮かべてください。四人の友人が外食しようということになり、そのうちの一人が車いす利用者だったとします。事故で足を骨折したことによる一時的なことかもしれませんが、車いすによるアクセスの制約があるため、どこにでも好きなレストランに行けるとは限りません。アクセシビリティがないためにこのような客を失ったレストランの損失は、この場合、一人ではなく四人全員です。これは私たちが「ビジネスケース」(投資対効果)と呼んでいるものです。
障がい者のインクルージョンは、ビジネスにおいて理にかなっています。モールやそのほかのところでアクセシビリティへの取り組みを目にすることが多くなったのも、そのためです。このようなビジネスのメリットに気づく人が増えているということです。ロータリーについて言えば、成長を目指すのであれば、思慮の欠如や不注意、または暗黙の排除を通じて会員を失ってしまうことはできません。インクルージョンの概念を受け入れる必要があるのです。そうすれば、思っていたよりも多くの人がロータリーへの参加に関心を示すでしょう。

【プロフィール】
ジェレミー・オッパーマン(Jeremy Opperman)
2020年にNewlandsロータリークラブ(南アフリカ、ケープタウン)に入会。網膜色素変性症(障がいが徐々に進行して全盲にいたる先天性疾患)を患い、組織における障がい者雇用、ユニバーサルアクセスのためのビジネスケースの作成、障がい者のインクルージョンへの戦略的アプローチといったトピックについて幅広く講演、執筆、コンサルティングを行う。 詳しい略歴はこちら。
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