By エリザベス・ユソヴィッチ

次世代のリーダーへのメンタリング(*ページ下部の注を参照)の重要性についてロータリー会員に話をすると、「メンターになりたいのは山々だが、時間がない」という声をよく耳にします。
これに対する私の答えを、あるエピソードを交えて紹介したいと思います。
さまざまな場面で訪れるメンタリングの機会
昨年、地元大学の学生を対象としたネットワークづくりのイベントに参加しました。このイベントの目的は、学生が現役ビジネス人たちに自己紹介をし、数分間の会話をした後で、ほかの会話に自然に移行する練習をする、というものです。
私が出会ったある学生は、大学でファッション販売を専攻していました。商品販売に関心をもった理由を尋ねると、「職場で失敗したことがきっかけ」と言います。
高級デパートでバイトしていたこの学生は、女性服の売り場を担当していました。ある日、マネキンが着ていた服が売れたため、裸のマネキンが売り場にあるのはよくないと思い、新しい服を選んでマネキンに着せました。
メンタリングの機会を見逃さない
翌週に職場に行った学生は、女性服の仕入担当者とのミーティングに呼ばれました。「怒られて、クビになるのか」と思ったそうですが、仕入担当者はそのミーティングを学生へのメンタリングの機会としたのです。マネキンに着せる服は会社が決めるものであること、また、学生が選んだ服が順調に売れていることを、仕入担当者は説明しました。
さらに、学生に才能があると考えた仕入担当者は、大学にファッション販売の専門課程があることを伝え、専攻を勧めただけでなく、アドバイスや励ましの言葉をかけました。「学位を取得したら、私を雇ってくれるとも言ったんです」と学生は誇らしく語りました。
この学生の話は、その日に私が聞いたことの中で、一番記憶に残っています。しかし、さらに印象深かったのは、この仕入担当者の先見性です。この人は、学生に才能を見出しただけでなく、自らメンターになり、手本になることを意図的に選びました。手本を示すことで、将来にこの学生がキャリアを積み、自分と同じようにほかの若い女性のメンターや手本になってくれることを願ったのです。
ロータリーでも重要なメンタリング
誰でも、若いロータリー会員やローターアクト会員の手本やメンターになれます。直接の対話やバーチャルでのやりとりを通じて、若い人たちの才能を認め、それを伸ばすよう励ましてあげることができます。大切なのは、時間ではなく、その意図なのです。
若いリーダーたちは、私たちの言動を観察し、そこから学びます。さまざまな場面に存在するメンタリングの機会をとらえることで、ロータリーでも才能ある次世代のリーダーに機会の扉を開くことができるでしょう。

【寄稿者紹介】
エリザベス・ユソヴィッチ(Elizabeth Usovicz)
カンザス・シティプラザ・ロータリークラブ(米国ミズーリ州)会員。国際ロータリー理事エレクト。2014年にホワイトハウスで表彰される。
*編集者注:「メンタリング」(mentoring)とは人材育成の手法の一つで、「メンター」(mentor)と呼ばれる経験豊かな年長者が、組織内の若年者や未熟練者と定期的・継続的に交流し、対話や助言によって本人の自発的な成長を支援することをいう。(出典:コトバンク)
調査によると、メンタリングプログラムを導入しているクラブでは、会員維持率が高いことが分かっています。ラーニングセンターの「メンタリング(基礎)」コースでは、社会人へのメンタリングのメリットと責務を学ぶことができます。
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