寄稿者:天野幾雄 (2019-20年度 東京代官山ロータリークラブ会長)
「ラブコール〜あのひとに会いたい〜」 皆さんこのテーマにちょっと心を魅かれませんか?

これは東京代官山ロータリークラブ5周年と、当クラブの例会場であるヒルサイドテラス(東京都渋谷区)50周年を記念した、クラブとヒルサイドの共同イベントです。個性的な当クラブのメンバーが『ラブコールしたいあのひと』をお迎えしてのトークセッションで、2019年9月〜2020年8月まで毎月1回、全12回開催予定で始まりました。
当クラブは、初代会長の遠山正道さんが、代官山らしい新しい試みができるクラブにしたい、クリエーターを中心としたユニークなクラブにしたいという思いで結成し、メンバーも通常のロータリークラブから見ればかなり特異です。アートディレクター、グラフィック・プロダクト・インテリア・ファッションなどの各デザイナー、プロデューサー、ミュージシャン、建築家、弁護士、医者‥‥と、一線で活躍する人が多くいます。合言葉は「一生の仲間になろう」です。
楽しんでいただける魅力あるイベントにするために、メンバーが「ラブコール〜あのひとに会いたい〜」のゲスト探しを開始。候補者名が挙がっても、超忙しい人ばかりで、「OKしてくださるのか?」「スケジュール調整は?」と不安をかかえながら、熱意をもって懸命に動き出しました。その努力の結果、前半6カ月分のゲストと日程が決まりました。
- 第1回:リリー・フランキー(俳優)
- 第2回:コシノジュンコ(ファッションデザイナー)
- 第3回:KIGI植原亮輔・渡邉良重(グラフィックデザイナー・プロダクトデザイナー)
- 第4回:内藤廣(建築家)
- 第5回:杉本博司(現代美術家)
- 第6回:箭内道彦(クリエイティブディレクター)
毎回、19:00〜20:30がトークセッション、20:30〜21:30がヒルサイドバンケットでの交流会で、合わせて2時間半。

第1回にお迎えしたリリー・フランキーさんとのセッションでは、140席が満席に。話題映画に多く出演し、受賞も多いリリー・フランキーさんは、俳優のほかにイラスト、デザイン、文筆、写真、作詞、作曲など、多種多才な顔を持つマルチタレントです。エスプリに富んだ軽妙なトークが続き、生い立ち、転機、苦労、独自の美学など、普段、公の場ではなかなか聞くことのできない話ばかり。耳をそばだて、真剣に見入り、時に大声で笑う中、あっという間に90分が過ぎました。すぐに会場を隣のヒルサイドバンケットに移して交流会で熱く盛り上がり、お陰さまで第1回目の「ラブコール〜あのひとに会いたい〜」は好スタートを切りました。
2回目、3回目、4回目、5回目、6回目と評判も上々で順風満帆と思われた矢先、3月からは新型コロナウィルスのパンデミックのために残念ながら中止せざるを得ませんでした。
開催されたそれぞれの回の内容にも触れたいのですが、スペースの都合もあり、ここからは私、天野幾雄がモデレーターを務めた2回目の「ラブコール〜あのひとに会いたい〜」のゲストである世界的ファッションデザイナーのコシノジュンコさんについてご紹介します。
コシノさんと私のはじめての出会いは、資生堂のデザイナーだった1974年です。主力ブランドのベネフィークの広告シリーズに、デビュー間もない山口小夜子さんをモデルに起用し、衣装デザインをコシノジュンコさん、写真を横須賀功光さんにお願いしました。2年間にわたって毎月、顔を合わせて打合わせと撮影を行い、実に楽しい時間でした(その当時のポスターや小夜子さんのシリーズ広告を、会場であるヒルサイドプラザの壁面に飾り、少し前の7月1日〜31日に日本経済新聞朝刊に掲載されたコシノさんの「私の履歴書」を全ページ紹介して、一日だけの展示を行いました)。
コシノジュンコさんが今日まで日本を代表するファッションデザイナーとして続けてこられ、ファッションにとどまらず、オペラ、能、スポーツユニフォーム、花火のデザインまで未知の扉を開きつづけるその熱量、揺るぎない美学、天真爛漫な性格に、150人近いお客様は心ときめき、聞き入っていました。
セッション中、来日中だった高田賢三さん*(ファッションデザイナー)がご来場くださり、さらに会場が盛り上がるというハプニングもありました。
最後にコシノさんが大切にされてきた言葉を二つ、皆さんにもご紹介しましょう。
『向こう岸、見ているだけでは渡れない』
コシノさんがお母さまからいただいた言葉です。「向こう岸」とは、人生の目標とか憧れ、ヴィジョンのようなもので、常に心がけてこられました。
もう一つは、いつも出会いを大切にしてこられたコシノさんらしい言葉です。
『出会いはクリエイティブ、人生の発見である』
このすばらしい言葉を、東京代官山ロータリークラブとしても、しっかりと心に受け止めたいと思いました。

(*高田賢三様は、誠に残念ながら、2020年9月に逝去されました。心からご冥福をお祈り申し上げます。)
【寄稿者プロフィール】
天野 幾雄 IKUO AMANO
アートディレクター/グラフィックデザイナー
1965年東京藝術大学卒。株式会社資生堂宣伝部入社。ブランド広告、企業広告など数多くのデザインを手がけ、宣伝部長、役員待遇宣伝制作室長を歴任し、2004年独立。現在は「ジャパンデザインミュージアム」設立研究委員会を進行中。 ADC賞3回、カンヌ国際広告祭にて金賞、銀賞など、受賞多数。東京アートディレクターズクラブ(ADC)会員、日本グラフィックデザイナー協会(JAGDA)会員。2019-20年度 東京代官山ロータリークラブ会長。
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