ハリスの肉声:1933年のラジオ放送

~1933年ボストン国際大会で行われたポール・ハリスのラジオ演説から~

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ボストン国際大会でのポール・ハリス(一番右)。コロンビア、キューバ、英国、ドイツ、スペインからの大会出席者たちと。

1933年6月27日、ボストン(米国)で開かれたロータリー国際大会でポール・ハリスが演説し、国際理解と寛容の精神が世界各国のロータリー会員を結びつけていると語りました。

この演説は、ロータリー国際大会の演説としては初めてラジオ放送されました。ハリスは、自宅でラジオを聴くリスナーに向け、ロータリーを通じて文化の壁を超えた友愛を実現できると呼びかけました。「同胞である人間への愛を心に抱いているなら、あなたは潜在的なロータリアンです」

86年前のこの演説には、今も通じるメッセージが含まれています。この演説の録音でハリスの肉声をお聴きください以下は演説の全文(日本語訳)です。

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(ハリス演説)
この放送をお聴きの皆さんに向けてお話しでき、大変光栄です。私たちは、世界のほぼすべての文明国からここボストンに集まりました。英国、中国、日本、ヨーロッパ諸国と南米諸国、オーストラリア、ニュージーランドなど、40カ国以上が代表されており、帰国したら地球を一周することになるという代議員もいるでしょう。真にインスピレーションあふれる機会です。この集まりに触れ、私の心は、28年前にシカゴで開かれた最初の例会へと自ずと舞い戻ります。そのときの出席者は4人。小さなどんぐりからも大木が育つものです。

ロータリアンではない人びとの関心をかきたてるロータリーの特徴は、おそらく2つあるでしょう。一つは、それぞれの生業や職業の代表1名がロータリー会員になるという、いわゆる「職業分類」です。もう一つは、人種や政治的、宗教的立場がロータリー入会の妨げとなってはならないという規定です。これら2つの規定を通じて、ロータリーは、あらゆる職業や地位、あらゆる国、あらゆる形式の宗教の代表者に開かれています。しかしこのことが、ありとあらゆる不和をもたらすのではないかと考える方もいるでしょう。実際、知恵ある人間がこれほどの危険をはらむ組織を作りだすことなどあり得ない、と多くの方がおっしゃいました。ロータリーの才知と栄光は、まさにここにあるのです。

その仕組みはごくシンプルです。ロータリアンは多くの点で異なる者同士ですが、二つの点で完全に一致しています。第一に、すべての国を尊敬すべきであり、他国との取引において高潔でありたいと願っているとロータリアンは信じていること。また、誰しも各々の良心に基づいて神を崇める権利があると信じています。言い換えれば、ロータリーとは寛容の精神を表しているのです。第二に、ロータリアンは、すべての高潔な職業は、社会への奉仕に使われるのならば、その真価を認められる権利があると信じています。

こうした点で十分な同意が築かれているため、不和はほとんど耳にしません。ロータリーは、このような同意点を重視し、論争を引き起こす問題は避けます。ですから、ロータリーが人びとの共通項となって、誰もが安心して身を寄せられるのです。カトリック教徒、プロテスタント教徒、ユダヤ教徒、それ以外の教徒が親しい会話を楽しむべきではないという正当な理由などあるでしょうか?ロータリーでは、これが行われています。カトリックの牧師、ユダヤ教のラビ、プロテスタントの牧師が、ロータリークラブ例会で肩を並べて座り、楽しい親睦をともにしています。インドを旅すれば、イスラム教徒、ヒンドゥー教徒、キリスト教徒がパンを分ちあっている姿を目にするでしょう。これこそ本来あるべき姿ではないでしょうか?

「地の上に、御心にかなう人びとに平和があるように」という言葉を思い出してください。簡単に言えば、ロータリーは、このロバート・バーンズの言葉を現実にしようとしているのです。この言葉を覚えておいてください。人類が兄弟となる日がいずれ来るでしょう。

ロータリー会員でない人は、よくこう尋ねます。「どうやって実現できたのか?」と。これは答えるのが難しい質問です。答えの一つとして、ロータリーの魅力は、会員がありのままの自然体でいること、自分らしくいることが奨励されていることです。わざとらしさが蔓延したこの世界で、冷たい、無意味な形式主義者ではない人たちと出会えるのは新鮮です。誰にでも少年の心があり、その心を引き出す最善の方法は、友情に満ちた自然な会話なのです。

西洋と東洋、凍てつく北の国から赤道直下の国まで、ありとあらゆる国から大勢が集まって楽しんでいるこの大会を見ながら、私が感じているこの誇りを、皆さんにもぜひ感じていただけたらと思います。夫婦で来ている人も大勢います。互いに手をつなぎ、皆あふれんばかりの笑顔を浮かべています。もし(ラジオを聴いている)皆さんがここにいたら、エアシャーの大詩人(※1)の言葉が単なる夢想の表現ではなく、むしろ予言的であること、そして人間の最良の概念、普遍的な親善と平和の概念は、いつの日か実現するという私の結論に、きっと賛同してくださるでしょう。

究極的に、ロータリーは生き方であり、良き、自然で、健全で、友情に満ちた生き方なのです。この世界には、まだロータリアンとなっていない潜在的なロータリアンが大勢います。その多くの方が、今、この放送を聞いておられます。同胞である人間に対する愛を心に抱いているなら、あなたは潜在的なロータリアンです。

(※1:詩人ロバート・バーンズを指している)

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