秋も半ばを過ぎ、読書に適した季節となりました。
ロータリーでは、図書の寄贈や教師研修など、識字力の向上を目的とした多くのプロジェクトが実施されています。
識字とは、文字を読んだり書いたりする能力を意味しますが、最近では「リテラシー」という言葉も頻繁に使用されています。リテラシーとは「読み解く力」であり、文字だけでなく記号や専門用語などの多様な形での表現・情報を理解することも含まれます。学術面ではさらに細分化され、「メディアリテラシー」「ヘルスリテラシー」「環境リテラシー」などさまざまな分類があります。
たとえば、処方箋や診断書の内容を理解する、電車の時刻表を理解する、申請書に的確な情報を記す、一般的に使用されるようになった新しい言葉を理解する、道路標識を瞬時に判別する、といったこともリテラシーに含まれます。もっと身近な例として、職場や人付き合いで、社交辞令や遠回し表現の真意を理解するということもリテラシーだといえるでしょう。私生活を振り返ったとき、これらが困難に感じたことはないでしょうか。
困難が重なると、生活上での不便を被ることになります。家族との連絡や地域社会でのコミュニケーションが限定されるだけでなく、仕事のためのスキル習得や福祉サービスの利用も制限されます。また、不安や自信の喪失を引き起こし、実質的な経済的不利益をもたらすこともあるでしょう。
日本では、成人の英語力低迷や移民が直面する日本語理解の壁といったニーズがあるものの、発展途上国にあるような深刻な識字ニーズはありません。そのため、識字だけでなくリテラシーという観点からニーズを考えることで、奉仕プロジェクトの可能性を広げることができます。
「読書の秋」からさらに一歩進んで、リテラシーの発展にも注目してみてはいかがでしょうか。
日本のプロジェクト例
ロータリーショーケースでは、日本のクラブが実施したさまざまな奉仕プロジェクトが紹介されています。以下に紹介するプロジェクトは、リテラシープロジェクトだといえます。
外見では分からないような援助や配慮を必要としている人が、そのことを周囲に知らせる働きをする「ヘルプマーク」の普及を支援しました。周囲の人がこのマークの意味を知らなければ効果がないため、一般社会での認識を高めることが重要です。
稲城市小中学生英語スピーチコンテスト
(東京稲木ロータリークラブ)
読み書きができても、心の中で思っていることを的確に表現できなければ、それは言葉力の欠如といえます。東京稲木ロータリークラブは、自己表現力がないと国際社会で正当に評価されないという課題に目を付け、地元小学生を対象としたスピーチコンテストを開催し、子どもたちが英語を使って考え、そして表現する機会を創出しました。
郷土愛を育み、郷土の素晴らしさを後世に伝えるため、地元の団体や商工会議所と協力して「高石かるた」を完成させ、小学生かるた大会を開催しました。人生の土台を形成する郷土文化を理解し、それを言葉にしていくことは、「文化リテラシー」の枠組みに入るものといえます。
英会話「3人制」バスケットボール教室
(東京立川こぶしロータリークラブ)
3人制バスケについて、「5人が3人に減っただけ」と考えた人には「スポーツリテラシー」が必要かもしれません。スポーツリテラシーには、スポーツの魅力や意義を理解し、それを説明する力が含まれます。このプロジェクトでは、3人制バスケが2020年東京オリンピックの正式種目となったことを受け、その魅力を学び、さらに英語で理解しようというのが目的でした。
皆さんのクラブで実施された奉仕プロジェクトも、ロータリーショーケースでぜひご紹介ください。
(付記)本稿は、「識字」よりも広い意味をもつ「リテラシー」という観点から記しています。ロータリーのグローバル補助金を利用して「基本的教育と識字率向上」のプロジェクトに取り組む場合は、より具体的な目的と目標を定めた「重点分野の基本方針」に従う必要があることにご注意ください。
(執筆担当:加藤まさ)
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