寄稿者:山口和範(2570地区 高校生社会体験活動支援委員会 副委員長)
この記事は、ある県の荒廃に戦いを挑んだ、熱血ロータリアン達の記録である。高校中退率において、全国ワースト2位の県が、荒廃の中から健全な精神を培い、わずか数年で全国平均を下回った奇跡を通じて、その原動力となった信頼と愛を、余す所なくブログ化したものである…
TBS系列の往年の名作ドラマ「スクール☆ウォーズ」(下記※参照)のオープニングを彷彿とさせる出だしとなったが、私たちのストーリーも学校を舞台としている。
それは次の数字から始まった:
「高校中退率3.0%、全国ワースト2位」
これは2005年当時の埼玉県が突きつけられた数字である。全国平均とは大きく水をあけられていた。
これを受け、上田清司知事が当時のガバナーに掛けあい、中退防止を目的に2006年より「フレッシュ高校生社会体験プログラム」(現「自分発見!高校生感動体験プログラム」)を開始。埼玉県の2地区がタッグを組み、「オール埼玉ロータリークラブ」で県に協力し、高校生に就労体験の場を提供している。
当地区では、中退率の高い6校が対象となっており、各高校周辺のロータリークラブを中心に、2017年には74社が手を挙げてくれた。
県によると、中退者の約半数は1年生。高校全入時代を迎え、学校生活に対する意欲が低いまま辞めていく生徒が多いそうである。こうした中退者のその後の人生は、決して明るいものとはなっていない。
そこで、1年生を対象に、秋の一週間を使ってロータリアンの事業所等で就労体験をしてもらっている。生徒たちは、挨拶することから始め、仕事をすることの大変さ、そして同時に面白さも学んでいる。
無気力だった生徒たちは、就労体験を終えると、一様にこんな感想をもらす:
- 「将来を考えるようになった」
- 「コミュニケーションが大切」
- 「相手のことを考えて行動するようになった」
思うに、彼らは「人とのふれあい」を求めている。家庭や学校といった限られた場だけでなく、またネットといったバーチャルな空間でもなく、事業所の社長や従業員、そしてお客様といったいろいろな「リアルな人」に接することで、社会の広さや人の温かみを知り、悦びや楽しさが芽生えるようである。
その結果、家庭においても「親子の会話が増えた」、学校においても「生徒に好ましい変化」等、社会が良い方向に向かっているのを感じる。ロータリーとしてもまさに、職業奉仕の実践になっている。
こうした取り組みの甲斐あって、埼玉県の高校中退率も2016年には「1.2%」まで改善され、初めて全国平均(1.3%)を下回った!
「中退をしないで、無事に社会に出て、幸せな人生を送ってもらいたい」
それが、この事業に携わる大人たちの、熱き想いである。
「♪ 胸に眠るヒーロー揺り起こせ、生命より重い夢を抱きしめて走れよ ♪」
スクール☆ウォーズのテーマ曲「ヒーロー」の一節にあるように、私たちロータリアンはこの社会体験活動を通じて、高校生たちにエールを送りたい。
※『スクール☆ウォーズ ~泣き虫先生の7年戦争~』TBS系で1984~1985年に放映された学園ドラマ。実在する高校ラグビー部とその監督をモデル に、無名の弱小チームが新任教師の下で全国優勝を果たすまでのストーリー。

埼玉県教育局より表彰を受けた細井保雄ガバナー(左)
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